第445話 第三者side

「まあ、よい。玄関先で客人を立たせているのも不躾というもの。胡桃殿、よろしいかの?」


 コクリと頷く胡桃。


「家主の妹君の許可も得られた事でもあるし、上がるとよい」

「失礼します」


 パンプスを揃えて、住良木は家へと上がった。

 通されたリビングのソファーに座ったところで、住良木と対面するは白亜であって――、その二人の目の前には、アディールが麦茶の入ったコップを置くと台所へと移動し、胡桃と合流した。


「ねえ? エリカ」

「どうしたの? 胡桃」

「お兄ちゃんから、神社庁の事については聞いていたけど、白亜さんと、黒髪の美女さんは知り合いなの?」

「美女じゃなくて、アレは神社庁の奥の院の御神体でもある姫巫女を守る神薙の一人。住良木鏡花」

「名前は、お兄ちゃんが言ってたけど……。神薙ってことは、エリカと同じ?」

「同じじゃない。私は次期神薙だったから、正確には神薙じゃない」

「へー。それって、あの人の方が偉いってこと?」

「そう。でも、いまは私の方が、ずっと強い」

「それって、お兄ちゃんと契約したから?」


 その胡桃の問いかけを、アディールは肯定するかのように頷いた。


「そういえば、お兄ちゃん。ここ数日間、忙しそうにしていたけど、色々と仕事していたって、昨日気が付いたけど……。だって、お姉ちゃんになってたし……はっ! ま、まさか……、お兄ちゃんは、女になったからって! そういう仕事を!」

「胡桃、落ち着く。そういうことはマスターはしない」

「う、うん……」

「胡桃はいい子。(妄想がぶっ飛んでいる以外は……)」

「何だか、含みのあるような言い方をされた気がするの」

「気のせい」


 少し離れた台所で、興味深々と言った目で二人に見られている住良木は、白亜を真正面に見据えながら口を開く。


「それで、白亜様」

「要件は何用か? 鏡花よ」

「いきなり本題を聞かれますか」

「当たり前だ。ご主人様を起こさねばならぬからな。しかも今日は週の初めであり雨天であるからの。早めに行動を起こすことは必要であろう? それは、神社庁から神薙を派遣してきている主らも同じだと思っておるが?」

「……分かりました。それでは、単刀直入に話させて頂きます。桂木殿の容態は、如何ほどでしょうか?」

「特に問題ないようだの」

「問題はない……と、いうことですか?」

「うむ。神社庁が、どんな情報を知っていて訪問してきたかは知らぬが、ご主人様と契約している我らが何の影響も受けていないのだから、何も問題ないと考えるのが道理であろう?」

「――ま、待ってください!」

「何か?」

「白亜様が、桂木殿と契約をされたと言う事ですか? それは、どちらが主として――」

「先ほどから言っておろう。ご主人様が、主であり、妾とエリカは従者として契約しておると」

「――なっ!?」








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る