第442話 第三者side
川野外務大臣の発言に、閣議室内の空気が張り詰める。
「川野外務大臣。それは、一体、どこの国の立場の人間として発言した言葉になるのだ?」
「そ、それは……」
苛立ちを露わにみせた日本国防大臣の小野平に対して、顔を伏せる川野は一瞬、思考したあと口を開く。
「――わ、私は外務大臣の立場として言わせてもらっただけです」
「もういい。川野、お前は中国政府に対して日本国内でテロ活動を行った人間全てを中国で受け入れるようと連絡をしておけ」
「総理! それでは、抗議活動した1000人もの中国人を全て国外追放すると言う事ですか? そんなことをすれば国際社会から、笑いモノにされます!」
「中国人全てを強制帰国させないだけマシだ。これ以上の譲歩はない。分かったな? 川野」
「――クッ!?」
顔を真っ赤にした外務大臣である川野は、勢いよく椅子から立ち上がると顔を真っ赤にしたまま閣議室から出ていった。
その後ろ姿を一瞥した夏目一元は、失望したかのような表情を見せた。
――その頃、日本海を航行中の中国が誇る最新鋭空母『山東』とイージス艦2隻は、中国人民解放軍海軍3大艦隊が一つ『北海艦隊』が基地としている青島まで、あと一日の距離にまで近づいてきていた。
そんな最新鋭空母『山東』の作戦指揮室では、一人の男が、一つの映像を食い入るように見ていた。
男の名は、子轩(ズーシュエン)。
中国人民解放軍の少佐でありIQ220を超える天才であった。
「ばかな……、こんな動きを人間が出来るモノなのか?」
子轩(ズーシュエン)が、見ていた映像は、桂木優斗と中国人民解放軍特殊部隊「朱雀」との戦闘映像であった。
「素手で銃弾を弾き、私が作り出したパワードスーツすら破壊するなんて人間が出来るモノではない。そして神なぞ、この世界には存在しない。つまり……、これは日本政府が作った生物兵器に違いない。そう考えれば、全てに合点がいく」
「子轩(ズーシュエン)少佐!」
「何だ! 今、大事な時だと言う事がわからないのか!」
作戦指揮室に入ってきた兵士を怒鳴りつける子轩(ズーシュエン)。
そんな彼に対して兵士は――、
「子轩(ズーシュエン)少佐。総書記からの通達です。作戦は、失敗に終わった。すぐに帰投するようにとのことです」
「……ま……て」
「どうかされましたか?」
部屋から出て行こうとした部下の兵士を呼び止めた子轩(ズーシュエン)に対して冷ややかな視線を送る兵士に、苛立ちを抑えられずに、
「作戦が失敗だと?」
「はい。中性子爆弾は、日本政府が回収したとのことです」
「ばかな……、あの中性子爆弾は、絶対に間違いなく完璧に爆発するはずだった」
「ですが、本国からは日本には手を出すなと――」
「なん……だと……?」
椅子から立ち上がった子轩(ズーシュエン)は、兵士に詰め寄り、その両肩を掴む。
「桂木優斗の戦闘データーは、すでに解析が完了している。次に戦えば勝つというのに!」
子轩(ズーシュエン)は拳をテーブルに叩きつけると――、
「腰抜け共めっ! あの化け物を始末できるのは私だけだというのに! 何故っ! それが分からん! 中央部の老害の凡人どもめっ!」
恨み節を、兵士が居る前だというのに吐き捨てた。
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