第438話
山崎、パンドーラ、伊邪那美と別れて数時間後――、ようやく自宅前に到着したハイエースから降りる。
「それじゃ、神谷には、今後の長野県警との対応を一任するって伝えておいてくれ」
「分かりました。ですが、当主様が伝えればいいのでは?」
「他の仕事が振られたら困るだろ?」
「あー、なるほど……。それでは神谷警視長には、私の方から伝えておきます。それと、山崎様へは幾らほど支払う予定ですか?」
「1億円ということで伝えておいてくれ」
「1億ですか?」
「ああ。そのくらいの価値はあるからな」
欠伸をしつつ、俺は答える。
正直、もう眠い。
人間の肉体の再生に、かなりの力を使ったからな。
「あとは適当に任せた」
「――では、そのように伝えておきます」
俺は目を擦りながら白衣のポケットから家の鍵を取り出してドアを開ける。
「お兄ちゃん! お帰りなさいなの! …………誰なの?」
「俺だ、俺――」
やべぇ、ちょー眠い。
コーヒーで何とか誤魔化していたがカフェインが完全に切れた。
「あ、あの! 勝手に上がられても困ります!」
「何を言っているんだ? 胡桃」
「胡桃って! 私、外国人に知り合いなんて……エリカさんしか知りません!」
妹が険しい顔で、俺に突っかかって家に入れないようにとしてくる。
「白亜さんっ! エリカちゃん!」
「どうした? 胡桃」
「へんだけど、すごい絶世の美女のお姉さんが家に押し入ってきてるの!」
「ほう!」
「道場破り?」
何だか嬉しそうな声が聞こえてくる。
すぐに姿を見せる白亜とエリカ。
二人は、俺の姿を見るなり――、
「ご主人様。どうして、そんな姿に?」
「マスター。女性になった?」
「――え?」
二人の発した言葉に、口を開けながら俺を見てくる妹。
「お兄ちゃんなの?」
「ああ。何を言っているんだ? どこから、どう見てもお兄ちゃんだろ?」
まったく変な事を言う奴だな。
とりあえず俺は寝かせてもらおう。
自室のドアを開けてベッドにダイブする。
そして瞼を閉じると、すぐに睡魔が襲ってきた。
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