第436話
「えっと……え? ――あ、貴女が……、か、桂木警視監?」
「ああ。その通りだ!」
俺は腕を組みながら頷く。
「……じ、じょ……、冗談は……では……」
都築が信じられないと言った雰囲気で俺へと視線を向けてくる。
「都築署長、彼女じゃなくて――、桂木警視監が言っていることは本当です」
口を挟んできたのは田所巡査長。
まだ勤務をしていたとは……、
「ほ、本当なのか? 田所巡査長!?」
「はい。間違いありません。たぶん……」
「たぶん!?」
「いえ。実際は、桂木警視監が女装する様子を見ていた訳ではないので……」
「待ちたまえ! ――じょ!? 女装!?」
田所の女装という言葉に驚いた声を上げたのは、本山で――。
「本当に、桂木警視監なのか?」
「だから、俺本人だと何度言えば分かるんだ? どこからどう見ても俺本人だろ?」
「当主様。どこから、どう見ても女にしか見えませんが?」
「たしかに……、今は女装中だったな……」
「女装って……。その胸は作りモノなのかね?」
本山が、ツッコミを入れてくる。
「いや、本物だぞ。何せ遺伝子レベルで女装しているからな」
「もはや、それは女装ではないのでは……」
回りの捜査員の誰かが、そんなことをポツリと呟くが――、
「まぁ、些細な問題は横に置いておくとして――、都築警視正に本山警視監。生存者を発見したから渡しておく」
「生存者?」
本山が首を傾げる。
「ああ。結構いたから建物の中に寝かせておいたから、あとは警察の方で保護しておいてくれ」
「昨日の朝方から昼にかけて施設内を調べさせてもらったが、君が保護した17人と教団関係者以外の生存者は確認できなかったが?」
「森の中でも生存していた連中がいたから、生存者が多ければ、それだけ世間からの風当たりは弱くなるだろ? そうでもなくとも中国人の集団暴動に関して大問題になっているはずだし」
「それは、そうだが……」
「――と、言う事で、生存者の保護と、調書をよろしく頼む」
「分かった。それでは、生存者の確認だけをまずさせてもらってもいいか?」
「もちろんだ」
保護した人間を寝かせている建物へと移動する。
「こ、これは……!? 桂木警視監!」
顔色を変える本山警視監。
「何か?」
「これだけの生存者をどこで発見したのかね?」
「近くの森で」
「そんな馬鹿な……。これだけの人数を……、警察が見逃していたというのか……? ありえない……」
「とりあえず現実を見てもらおうか。それに、行方不明者が見つかれば見つかるほど世論は安定するだろ?」
「そ、そうだが……」
腑に落ちないと言った様子だが、人を生き返らせたということを態々、公表するつもりもないし、教える気もない。
「ということで、あとは長野県警の方に任せる」
「分かった」
渋々と言った様子で頷く本山警視監。
それを見て、俺は一段落したと思い欠伸をする。
「それじゃ、俺の仕事は終わったから、また何かあったら依頼してくれ」
本山の横を通り過ぎたところで――、
「桂木警視監!」
「どうかしたのか? 署長」
都築署長が、俺に話しかけてきた。
まだ、何か言いたいことがあるのか?
「そのあれだ……」
言い難そうな表情で、ハッキリとしない。
「まだ、何か仕事があるのか?」
「桂木警視監。君は、その恰好のままで警察をした方が、反感が出来難いと思うぞ?」
「おい。どういう意図で言ったのかキチンと説明してもらおうじゃないか!」
まるで普段の俺だと、反感を買いまくっているような言い方はやめてほしいものだ。
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