第428話
――ハイエースの後部ドアをスライドさせて開閉させる。
そこで、俺達を待っていた山崎や、村瀬に田所と目があった。
「――誰ですか?」
「ふっ。俺だ」
「……」
「……」
「……」
3人が無言になる。
そして――、
「も、もしかして旦那ですか?」
「ほう。よく分かったな」
「その横柄な態度じゃなくて、その話し方と素振りから……」
山崎は、すぐに察したのか、女装した俺を理解したようで――、
「当主様……、で……よろしいんですよね?」
「そうだな」
「何と言うか当主様から感じる雰囲気が、そんな感じだったので、でも、それって――、女装の域を超えているか、化けているというか……、式神でもないですよね……」
「ふっ、正真正銘の遺伝子レベルで女装している」
「当主様。それは、もう女装ではないのでは……」
「え? ちょっと待ってください。え? どういうことですか? 当主? 旦那? も、もしかして……ちょっとありえな……」
「落ち着け、田所巡査長」
「ま、まさか……、桂木警視監です……か?」
「ああ。よく見れば分かるだろ」
「……どう見ても女性にしか見えないと思いますけど……」
後ろでナース服を着たパンドーラがツッコミを入れてくるが、もちろん既読スルーしておく。
「まぁ、とりあえず治療に向かうぞ。田所巡査長、この病院の院長と話をしたい。向こうに取り次いでくれ」
「……」
「おい! 放心している場合じゃないだろ!」
「――ハッ! あ、はい! わ、わかりました!」
「早くしろよ? 患者は、待っていないからな」
俺は腕を組みながら睨めつける。
田所は、すぐに病院内に駆けこんで行き――、5分ほどで戻ってくる。
「桂木警視監。赤十字病院の院長が、すぐにお会いしたいとのことです」
「よし。すぐに案内しろ。行くのは、俺と伊邪那美だけでいいからな」
「え? わ、私は? 一応、ナース服に着替えたのに……」
「はぁ……。お前は、握手で商売するほど有名なんだろ? そんな奴が、病院内でうろついていたら後々、面倒にしかならん」
「そういえば、そうですね。旦那」
「ああ。山崎とパンドーラと村瀬は待機しておいてくれ」
「了解しました」
村瀬の返事に頷いたあと、田所の案内で病院内へと足を踏み入れ到着したのは院長室。
ドアを開けて中に入れば、50代過ぎの恰幅のいい眼鏡をかけた男と、30代前半と思わしき白衣を着た男が二人、院長室で俺達を待っていたようで、
「田所巡査長、お待ちしていました。それで、桂木警視監というのは……」
部屋に、まず入った俺へと男達の視線が集中する。
まずは胸に――、そのあとに顔に――。
「俺が桂木優斗だ。今回は、一般人を診るということで、マスコミ対策を含めて、このような恰好で女装している」
「え? ええ? ……あ、あの田所巡査長。どう見ても女性ですが?」
「それは、色々ありまして……、とりあえず、こちらの方は桂木警視監です。奇跡の病院の立役者でして……」
「そういうことだ。疑うのは分かるが、今回は長野県警からのクエストで来ている。安心して患者を任せてくれ」
声も完全に女性となっている事もあり、男達の俺を見る目は、完全に不審者を見る者そのものだ。
「つまり、それは女装だと?」
「何度言わせればいい? よくできているだろ?」
「どう見ても女性にしか……。なあ? 折本外科部長」
「はい。小林院長」
「まぁ、驚くのも無理はない――」
俺は部屋に入り、ソファーに腰を下ろしてから脚を組み――、
「とりあえず、落ち着いてくれ。あとは、俺に任せてくれればいいから」
「田所巡査長、彼が本当に桂木警視監なのかね?」
「はい。本官も信じたくはありませんが……」
「おい、コーヒー」
俺は近くで立っていた医師にお願いする。
まずは、きちんとしたコミュニティの形成からが俺のモットーだからな。
「――あ、はい……」
男がすぐにコーヒーを用意し、俺の目の前のテーブルへ置く。
「とりあえず、寛いでくれ」
「ここは私の部屋なんだが――?」
そう院長と呼ばれた男が言ってくるが――、
「それよりも、話を詰めよう。俺も時間がないからな」
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