第427話
「無免許は問題あるじゃろ」
「ええ。最近の技術職は、免許が必須だと私も記録しているわ」
どうして、そこで二人してツッコミを入れてくるのか。
「――と、とりあえず外に出るぞ。患者は待ってないからな」
「待つのじゃ。まず、自身の活動名くらいは決めておいた方がいいのではないのか? お主の事だから、その場で適当に考えて足がつくような名前を言い出しかねんからの」
「名前か……」
腕を組む。
「奇跡の病院から派遣されてきた医師ってことで、ゴッドハンド桂木! とかでいいんじゃないのか?」
「……」
「……」
無言で、パンドーラと、伊邪那美が互いに顔を見合わせると何故か知らないが溜息をつく。
「なんだよ……」
「お主。ネーミングセンスの欠片もないのう。そもそも桂木って名前を使っている時点で、関係者だと――、バレバレだろうに」
「さすがに、女になっているんだから大丈夫だろ」
「それでも、極力、追及されないように行動するのが隠密の心構えであろう?」
「……まぁ、たしかに……」
そうなると異世界で使っていた名前がいいか。
「――なら、エリーゼ・フォン・リンゼルブルグとかどうだ?」
「いきなりの外国人名とか……」
「――なら、お前はどんな名前なんだよ。伊邪那美」
「妾は、山崎ミコトと言う名前があるからのう」
「私も、山崎フクって名前があります」
「……二人とも安直すぎだろ。大体、伊邪那美。お前、山崎の苗字と伊邪那美の苗字を変えただけだろ」
「部外者に言われたくない」
「まぁ、そりゃそうだが……。だが、安直すぎだろ」
「苗字なんて、そんなものなのだ」
「それにパンドーラのフクって、どこから来ているんだ?」
「福音の箱の福から取っていますよ? 桂木様」
「それで苗字を山崎にして山崎フクってことか……」
「はい!」
「それよりも、お主のエリーゼ・フォン・リンゼルブルグという名前は、どこから来たものなのだ?」
「あー。知り合いの神官の名前だな」
よく冒険者時代に偽名で使っていたな。
元々、神官で魔王討伐の際のパーティメンバーでもあったが。
「神官と言う事は、桂木様は、教会にもお知り合いが?」
「悪いが、知り合いはいないな」
「どういうお知り合いなのですか? もしかして邪神の神官とか?」
「パンドーラ。お前は、普段から俺をどういう目で見ているのかよく分かった」
「そ、そんなことは……」
「まぁいい。それよりも、どうしてパンドーラ、お前まで白衣を着ているんだ?」
「こういう服装ってコスプレみたいで憧れますから」
「コスプレ言うな」
「はい……」
「とりあえず、さっさと出るぞ。名前は、それぞれキチンと覚えておけよ。俺のことはエリーゼと呼ぶように」
「なあ、主よ」
「何だよ?」
「その口調は変えなくてよいのか?」
「ふっ、問題ない。こう見えても、俺の作法は完璧だからな!」
伊達に冒険者時代に魔物討伐クエストのために後宮で、女装をして一カ月間仕事をしていた訳ではない。
女の作法については、パーティメンバーだった貴族出身の魔法使いのリコリッタに叩き込まれている。
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