第418話

「――っぱり……」


 横を一緒に歩いていた都が、ポツリと呟く。

 身体強化をしていない俺には、その声を全て正確に聞くことは出来なかった。

 だから――、


「どうした?」

「やっぱり! 昨日、早退したのって、警察関係の仕事だったのよね?」

「――いや。それは……」


 俺は頬を掻きながら、どう説明したらいい物かと考える。

 テスト前の、都に迷惑をかけてまで勉強を教わっておいて、学校を早退するどころか仕事までするとか、さすがに本当のことは言えないだろ。


「……わ、わた……私、心配なの! 優斗のことが!」


 それは、俺がバカだから心配だということか……。


「さすがに、そこまで心配しなくても大丈夫だと思うが……」

「大丈夫って……、心配しなくてもいいって……。どうして……どうして、そんなことを言うの……?」


 テストのことだけで、大げさだな。

 流石にテストで赤点をとって死ぬってことはないんだし。


「いや、だって都には多少の迷惑はかけたが、基本的には都には関係ないことだろ?」


 テストの結果なんて、結局のところ自分の問題だからな。

 都には勉強を見てもらったりと時間を使わせてしまったことは感謝しているし迷惑を掛けたと言う事も分かっている。

 だが、テストの点数の責任の有無については都には責任はないし、都には関係ないことだ。


「――ッ!」


 都が強く息を吸い込んだのが分かった。

 横を歩いていた都を見ると大きな瞳に涙を湛えていて――、


 ――パチン!


 軽い音と共に、頬を引っ叩かれた。


「都?」

「優斗のバカッ! 頭から牛乳被っちゃえ!」


 突然、怒りだした都が、駅の方に向けて走り去っていく。

 その都の後ろ姿を見ながら、俺は足を止めたまま頬に手を当てる。


「……どうして、あんなに怒っているんだ?」


 都が怒った理由が、まったく分からん。

 むしろ女が、どうして突然怒るのか、そのメカニズムが一切理解できない。


「何でテストのことくらいで、あんなに怒っているんだ……」


 頭を掻きながら、独り言を呟くが、まったく打開策が思い浮かばない。


「はぁー、異世界でもそうだったが、女ってのは分からないな」 


 だが、一つだけ分かったことがある。

 それはテストの点数をキチンと取れれば問題ないということ。

 都は、俺に教えた労力が無駄になったと怒っているというのは、俺の直感が教えていた。


「とりあえず都の安全は白亜が見ているはずだから問題ないだろう。まずは警察本部に行くとするか」




 近くを通ったタクシーを捕まえた後、千葉県警察本部に到着した俺は、警察本部内に用意された部屋へと向かう。

 その際に、忌避な目を警察官から向けられたが、気にせずに歩き自室のドアを開けた。


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