第414話

「――だ、大隊長がやられた……」


 そんな声が、身体強化している俺の耳に飛び込んでくる。


「上層階からか……」


 跳躍し、広瀬が開けた穴から上のフロアへと移動すると同時に雷を纏ったナイフを投げ2人の兵士の頭を吹き飛ばし瞬殺してから、こちらに銃口を向けようとしていた兵士に刹那で間合いを詰めると同時に、兵士の顔面に掌底を当てつつ床に叩きつける。

 コンクリート製の床が罅割れ――、兵士の頭はスイカのごとく脳漿を撒き散らし爆ぜる。


「――さて……」


 視線を屋上へと続く階段へと向ける。


「撤退っ! 撤退っ!」


 兵士達が手榴弾を投げてくる。

 手榴弾が爆発する中、俺は階段を上がっていく。

 時折、断続的に飛んでくる銃弾を両手で弾きながら屋上へ上がったところで――、


「逃亡するつもりか?」


 2基のヘリコプターが離陸していく姿が目に入る。

 さらには、兵士がデカい筒のようなモノを俺に向けてくると、煙を吐きながら何かが飛んでくる。


「明らかに普通のヘリじゃないよな? あんなモノまで用意しているなんて、日本の治安はどうなっているんだ?」


 溜息をつきながら、飛んでくるロケットの弾頭を素手で受け止めたが、受け止めた瞬間、爆発し階段周辺を粉々に爆散させるが――、無事だった俺を見ると、ヘリは踵を返しタワーマンションから離れていく。


「この俺に喧嘩を売って生きて帰れるとは思うなよ?」


 財布からコインを2枚取り出し、空中に放りなげ、腕を横に振るう。

 2枚の硬貨は電磁場により射出され、逃亡を始めたヘリを貫通する。

 空中で爆散し、諏訪湖へと落ちていくヘリを一瞥したあと――、俺はタワーマンション屋上中央に設置されている2メートルほどの丸い玉へと近づく。


「残りは6分14秒か。中性子爆弾ってことは、海まで運ぶしかないな。まったく――、面倒なことをしてくれる。まぁ、とりあえずタイマーでも止めておくか」


 中性子爆弾に手を触れ――、


「65297321とエンターと」


 アルゴリズムを瞬時に解析してパスコードを撃ち込み停止させる。

 

「あとは、洋上にお届けするだけだな。まったく、こういう問題あるブツは地産地消してくれないと困るんだが? 魔王が放った大陸崩壊魔法も、魔王城で地産地消させてもらったからな」


 2メートルの中性子爆弾を担ぐ。


「さて、ハッキングした洋上の空母までお届けしてやるとするか」


 空中を蹴り、諏訪湖から日本海に目掛けて音速を超える速度で移動を開始する。


「桂木警視監! 仕事は終わったのでは?」


 俺が空を音速の数倍の速度で移動している事に気が付いたのか、モノクロを通して視ていたであろう対策室の都築から連絡が入るが――、


「まぁ、とりあえず中止爆弾の爆発は止めたんだがな……。この俺に喧嘩を売った以上、一般的に冒険者としては徹底的に皆殺しが常識だろ?」

「なん……だと……。それで、桂木警視監、君は中性子爆弾で何をするつもりなんだ?」

「聞いてなかったのか? 地産地消だ。自分で作ったものは自分達で処理しないと駄目だろう? 大丈夫だ! 気にするな! きちんとタイマーは3日後に変更しておいたし、外部からの通信はシャットアウトしてあるから、アフターケアもばっちりだ! さらに、迅速な配達もついていて、追加料金も発生しない親切仕様だ!」

「……君は、何を言って――」

「そうか。知らないのか……」

「何をだ?」

「諏訪市にハッキングを仕掛けてきていたのは日本海側の洋上からだぞ? 衛星にハッキングして艦船も確認した。デカい空母があったな」

「な――!?」

「分かっただろ? そこまで中性子爆弾をお届けするんだ。中々に親切だろ?」

「つまり3日後ということは……」

「軍艦なんだから、港に向かうはずだろう?」


 俺は空を音速の数倍の速度で移動しながら、笑みを浮かべる。

 3日もあれば、軍港につくだろう? と。

 そこで爆発すれば地産地消になるだろうという、俺の優しい配慮だ。


「君は自分が何を言っているのか理解して――」

「理解しているさ。やられたらやり返す。10倍返しだ!」

「待ちたまえ! そんなことをすれば国際問題に――」


 何か言っているが、俺はモノクロの通信をOFFにし、空母に向けて空の上を移動し続ける。

 署長と会話している間に、日本海に出ていたが、さらに、しばらく移動していると眼下には空母一隻とイージス艦2隻が浮かんでいるのが見えてきた。




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