第413話
デザートイーグルの銃口をコンクリート製の壁へと向けて、電磁場を形成すると同時に引き金を引く。
銃弾は、加速されレールガンとして、10センチほどの分厚いコンクリート製の壁をブチ抜き、身を隠していた兵士の胴体を吹き飛ばす。
「化け物を、これ以上、先に進めるな! 朱雀の意地を見せろ!」
叫び声が聞こえてくるが、俺は銃口を声が聞こえてきた方へと向けて、トリガーを引く。
まるで素人を相手にしているようだ。
自分が居る位置を教えるとは愚かな――。
銃弾は、鉄骨の柱を貫通し兵士の上半身を貫く。
次の兵士に狙いをつけたところでトリガーを引くが、軽い音だけが銃から聞こえてきた。
「弾が尽きたか」
この数時間、戦闘続きで銃弾が尽きたことに、俺は溜息をつく。
腰にデザートイーグルを戻し、兵士達へと走り近づく。
「――き、貴様! この拳銃が見えないのか!?」
「当たらなければ、どうということはない」
兵士が撃ってきた弾を左手で弾くと同時に、擦れ違いざまに抜き手で兵士の胴体を貫く。
「――グハツ……、こ、この……ば、化け物……が……」
「よく言われる」
コト切れた兵士の体を放り投げたところで、断続的な発砲音と共に天井に罅が入っていく。
咄嗟に後方へと跳躍する。
それと同時に天井が崩落し、西洋風の甲冑を身に纏った男が地響きを立てると同時に落ちてきた。
「広瀬警部補……」
「悪いな。桂木優斗、お前には恨みはないが、祖国のため、お前を此処で殺させてもらおう」
そう宣言すると共に、広瀬が巨大なマシンガンの銃口を俺へと向けてくるとトリガーを引き絞る。
高速で射出されてくる銃弾の全てを素手で弾く。
「やはり――、神の力を有している貴様には銃は打つだけ無駄か!」
「了解した。貴様は俺の敵ということでいいんだな?」
「ハハハハッ! この期に及んで、この俺が味方だと本気で思っているのか! 桂木優斗!」
「いや、ただの確認だ。さすがに、会話をした相手を問答無用で殺すのは、目覚めが悪いだろう?」
銃弾を弾きながらも向けられてくる殺意に俺は笑みを浮かべる。
「とりあえず――」
そこまで言ったところで、俺はコンクリート製の床を踏みつけ蹴る。
刹那の時間で、広瀬の懐に潜り込んだところで、広瀬の胴体に向けて抜き手を放つが――、突然の爆音と爆風に共って広瀬が一瞬で俺から距離を取る。
その際に、俺の抜き手は空を切り、発生した真空の刃が広瀬の巨大なマシンガンを貫通しバラバラに解体する。
「おいおい。素手で、ミニガンの回転し熱を帯びている砲身をぶち壊すなんて、どういう身体能力してやがるんだ」
「……」
見て避けたという感じではない。
それだけは分かった。
恐らくは機械のアシスト。
「オートアシストが無かったら死んでいたところだぜ。さすがは神の力ってやつか」
「……」
俺は無言で、波動結界を維持したまま、広瀬を見るが――、
「まったく、戦闘に入ってから一言も話さないなんてつまらねーな。少しは殺し合いを楽しもうぜ?」
「……」
俺は無言のまま、身体強化を2%へと引き上げる。
「――ちっ。つまらねーな。ダンマリかよ」
広瀬が何か言っているが、戦闘中に殺す相手に会話するなど愚の骨頂。
一瞬で間合いを詰めると同時に、拳を広瀬の胴体へと生体電流を増幅したことで作りだした高圧電流を纏った拳を叩きつける。
オートアシストが反応できない速度。
「ぐはっ――」
後方へと吹き飛ぶ広瀬。
いくつかのコンクリート製の柱を薙ぎ倒しながら、広瀬はコンクリートの壁へとぶつかると、ようやく止まる。
「――な、何が……。パワードアーマーの、耐久度が限界……だと……? ありえない……。たったの一撃で……」
広瀬に近づく。
「――ヒッ! ――ち、近寄るなっ! ――な、なんなんだ? 神の力とは、これほどのモノなのか!?」
10メートルまでの距離まで近づいたところで、広瀬が右手のひらを俺の方へと向けてくると笑みを浮かべ――、
「ハハハハハハッ! 最後まで、戦場では油断は禁物だ! 死ね! 化け物っ!」
「――で?」
「――な、なんで……、何でだ? 何故にっ! 超音波攻撃が発動しない! ――カッ!?」
俺の手刀で刈りとった広瀬の頭が空中を舞う。
床に落ちた頭は――、その表情は、何が起きたのか理解できないと言った感情を張り付けたまま絶命していた。
「相手が何をしてくるか分からない以上、相手が機械で体を覆っているのなら、それを破壊するのが優先だろうに。お前は、戦闘の素人なのか?」
まったく、こんな戦闘の素人を戦場に送り込むとは、中国共産党の軍部も焼きが回っているようだな。
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