第412話 第三者side

 断続的にインカムを通して入ってくる悲鳴と自身の部下たちからの報告。

 それに対して、チェンは歯ぎしりしながら爆弾を設置している兵士へと駆け寄った。


「まだ用意はできないのか!」

「――あ、あと1分ほど……」

「くそっ! 早くしろ!」


 吐き捨てるように言葉を部下に叩きつけたチェンは、ミリタリーボックスの中から黒光りするミリタリーアーマーを取り出し、装着していく。


「大隊長!」


 そんな彼の元に近づいてきた兵士の一人が口を開く。


「部隊の半数が壊滅。現在、爆発物により、化け物の視界と閉ざすことで歩みを遅らせようとしていますが、まったく効果がありません!」

「そうか……」

「大隊長、それは――」

「パワードアーマーだ。どうやら、アレには生半可な攻撃は意味を為さないようだからな」

「そうですが……。それは、米軍から奪取した試作品なのでは?」

「それは、どうだろうな? この試作パワードアーマーは、少佐が手を加えたもの……」


 チェンは、体の全身を覆う機械を内蔵したパワードアーマーを着込んだあと、首の起動ボタンを押す。

 途端に機械音と共に全身が軽くなる感覚を覚え――、彼は一回り大きくなった自身の体を動かしながら近くに置かれていたコンクリートブロックへと拳を振り下ろす。

 拳は、コンクリートブロックを軽々と粉砕する。


「す、すごい……」

「ああ。予想以上だ。少佐の話だと、常人の10倍近い力を出せるとのことだ。それに、このパワードアーマーには、至近距離からのマテリアル徹甲弾も意味を為さない。たしかに、桂木優斗は、生半可な攻撃は通じないが」


 そう語りながら、チェンは手のひらをコンクリート製の資材へと当てると、途端に、ウィィィィンと、短い音を立て始め――、最終的には甲高いキィーン! と言う音を立てる。       

 近くに立っていた兵士は、高音に耐えられなくなり耳を抑える。

 それと同時にコンクリート製の資材が粉々に砕け散る。


「こ、これは……。一体……」

「超音波攻撃らしい。内部にまでダメージを与えることが出来る。このパワードアーマーは、本来なら使うつもりはなかったが仕方ない。少佐の話では、このパワードアーマーを着た兵士が桂木優斗と戦った場合の勝算は99%だということだ。これは中国が誇る戦術スーパーコンピューターが導き出した完璧な答えだ」

「す、素晴らしい……。――で、では!」

「ああ。まぁ、顔見知りになり知らない仲ではないが、偉大なる祖国の為に――、そして、このパワードアーマーのデータ蓄積の為に、あの男には死んでもらうとしようか」


 チェンは、100キロを優に越すミニガンを手に取ると、桂木優斗が戦っているであろう階下へと降りていく。


「悪く思うなよ? 化け物。お前の実力は――、戦闘力は既に、把握済みだ。相手の実力を正確に把握するという事は戦場では正当な権利だからな。お前が如何に強くとも、それが神に与えられた力であっても、すでにお前の力は丸裸も同然っ! 本物の命のやり取りの場というのを見せてやろう。戦場の経験の差というやつをな!」




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