第409話 第三者side

「――い、一体……、何が起きているというのですか?」


 ズーシュエンは、必死にキーボードを打ちながら震える声で呟く。


「そんなことが……。この戦術スーパーコンピューターは、日本のスーパーコンピューター富岳のデーターを入手し、私が改良を加えた世界最高のスーパーコンピューターのはず! それなのに、防御壁も100を超える数、プラグラミングしていたと言うのに! 一体っ! 何がっ! 起きたというのですか!」


 男は、自身が作った世界最高の戦術スパコンが、気が付けばハッキングされていた事実に驚き、すぐに対処を始めたが、何の成果も得られなかったことに対して憤りを感じていた。

 

「ありえない……。世界最高の知能を持つ、このIQ220の私ですら理解できない誰かが、ハッキングを仕掛けて来たというのですか……。こんなことはありえない……。出来るとしたら――。ま、まさか……」


 そこでズーシュエンは、顔を上げる。


「なるほど。そういうことですか……。日本国政府は、富岳を超えるスーパーコンピューターを作っていると聞いていましたが、それを使って逆にハッキングしてきたという事ですか!」

「少佐! 大変です!」


 作戦会議室に兵士が飛び込んでくる。


「何ですか?」

「それが、諏訪市全域のインフラを――」

「分かっています」

「そ、そうでしたか」

「ええ。日本政府が虎の子のスーパーコンピューターを使い、こちらの私の芸術的なまでのアルゴリズムを解析し、逆ハッキングを仕掛けてきたのです」

「そ、それでは……」

「腐っても技術大国と言ったところですか。まったく……」

「それでは少佐、どういたしますか?」

「ここまで私をコケにした連中は初めてですよ。中性子爆弾との回線は繋がっていますね?」

「はい。まだイージス艦の電波通信設備とは繋がっていますが……」

「よろしい。それでは日本国政府に知らしめてやりましょう。この私に喧嘩を売れば、どうなるのか! と、いうことをね!」

「ですが、朱雀は――」

「あれは使い捨ての部隊。幾らでも変えはあります。それよりも、洋上の我々が居る場所が日本政府にバレた可能性があります。すぐに本国に引き返しますよ」

「分かりました……」


 兵士が部屋から出ていく。

 扉が閉まり静まり返る室内で――、


「まぁ、日本政府が面と向かって偉大なる中国人民共和国に挑んでくる可能性はありませんけどね。それでも、弱みを握られるのは困りますからね」


 静かな口調ではあったが、ズーシュエンの胸の内は復讐の炎を燃やしていた。




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