第408話
音速で、諏訪市上空を飛び諏訪湖上空で停止したところで村瀬から借り受けた携帯電話を取り出す。
それと同時に、モノクロの通信機をOFFにした後に、電話をかける。
数コール鳴ったところで――、
「はい! お兄ちゃん!」
「……んん!? ど、どうして俺からの電話だと分かったんだ? 胡桃」
電話口から聞こえてきたのは、元気のよい妹の声。
「えっとね……。私の友達なら、携帯電話に登録しているから」
「ふむ」
「それで、登録がない電話番号から電話が掛ってくるのは、お兄ちゃんくらいだから。だって……」
「だって?」
「お兄ちゃん、友達少ないし――」
「――ぐはっ」
妹よ。その言葉は、俺にダイレクトダメージが入るんだが? とくに、身内からの、「友達少ないよね?」と、言う言葉は……。
「それに、お兄ちゃんって、いまは仕事中だよね?」
「……どうして分かった?」
「だって、都さんから電話掛かってきたし、お兄ちゃん、ずる休みしたって」
何だか、俺の行動が完全に家族に監視されているような気がするんだが……。
「都さん、すごく怒っていたの。勉強しないと大変だって、お兄ちゃん、大丈夫なの? 勉強というよりも帰ってきたらすごく怒られると思うの」
「そこはアレだ。俺も異世界帰りで色々と仕事がな……」
「お兄ちゃん。何でもかんでも仕事を引き受けていたら駄目なの」
「お、おう……」
どうして、俺は妹にまで怒られないといけないのか。
「それで、今日は夕飯までに帰れるの?」
「何とか努力してみる」
「それで、お兄ちゃん」
「――ど、どうした?」
「電話してきたは、帰りが遅くなるっていう電話なの?」
「――いや。白亜に電話を代わってくれないか?」
「白亜さーん。お兄ちゃんから電話なの!」
「むむっ! ご主人様からじゃと!? ご主人様、お待たせしたのじゃ! 都殿なら、妾の式神が、守っておるから問題ないのじゃ。それよりも、今は諏訪市にいるようじゃが、かなりお取込み中のようじゃな」
「色々と知っているようだな」
「うむ。妾とエリカはご主人様と繋がっておるからの。エリカには、まだ無理ではあるが、妾になれば千里眼があるから分かるのだ」
「そっか。――で、白亜」
「分かっておるのじゃ。爆弾の位置であるな?」
「ああ。調べられるか?」
「空弧となった妾の千里眼を持ってすれば、すぐなのじゃ。ご主人様よ、爆弾は作りかけの背の高いビルにあるようじゃ」
「どのくらいの高さか分かるか?」
俺は、諏訪湖上空へ大気を粒子を操作し土台にしながら周囲を見渡す。
「そうじゃのう。千葉駅前にあるデカいタワーマンションがあるであろう? あれと同じくらいの高さなのじゃ」
「つまり40階前後の高さってことか?」
開けた湖の上空。
そこを中心にして、身体強化を行った上で周囲を見渡し――、
「見つけた。あれか……作りかけのビルってのは……」
視線をビルの方へと向けると、屋上には直径2メートルほどの丸い球体が置かれていて、その周辺には銃などで武装する集団が動いているのが見える。
「助かった。白亜」
「あとご主人様」
「どうかしたのか?」
「猶予時間は10分もないようじゃ。爆弾のタイマーが、いま10分を切ったのじゃ」
「そういうことは早く言ってくれ。それより白亜、助かった」
「白亜。マスターから電話?」
「うむ」
「電話、代る」
「マスター、今日の夕飯は何がいい?」
「いや、いまは夕飯の話をしている時間はないから」
「……それは、何が食べたいって聞いた時に、夫が、何でもいいって言っているのと同じ? そういうこと?」
「違うから! それより時間がないから! 一端切るぞ!」
「あっ、マス――」
途中で電話を切る。
まったく、時間がないというのに。
まぁ、白亜が上手く、たぶんサポートというか説明してくれていることだろう、たぶん。
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