第407話
立花に、そう答えたところで――、
「全捜査員に告げる。諏訪市警察署内拘留所において、中国人民共和国軍の特殊部隊『玄武』のメンバーが全員、射殺された。繰り返す――」
モノクロの眼鏡につけられているスピーカーから、拘留中の玄武メンバーが拘留所で射殺されたという情報が飛び込んでくる。
「それは本当なのか?」
俺は、都築署長へ確認する。
いきなりのあえりない情報だからだ。
警察署内で射殺されるとか……。
「桂木警視監か? 本当だ」
本当なのか……。
日本の警察のセキュリティはどうなっているんだ……。
「……犯人は?」
「分かってはいない。それと署の駐車しているパトカーの後部座席からも、特殊部隊『玄武』のメンバー1人の死体が確認されている。死亡理由は分からないが――」
「それは、俺が尋問していた男か?」
「そうなる」
「……広瀬警部補は、そこには居ないのか? 玄武のメンバーを運ぶと言って車でキャンプ場を後にしたぞ?」
「広瀬警部補は、一度は警察署に来たらしい。そのような目撃情報はある」
「……妙だな。目撃情報はあるが、運んだ玄武のメンバーの身柄は死体のまま放置とか……。少なくとも、俺が確認した限りでは健康そのものに身体は治しておいたんだが……」
それに広瀬が、約束を違えるとは思えないんだが……。
「今現在、広瀬警部補の姿は見つかっていない。携帯の電源は切れているようで連絡も取れない」
「そうか……」
――さて、どうしたものか……。
玄武のメンバーが全員殺されているのは、それは偶然ではないだろう。
「つまり口封じってことか? ――いや、証人を消したと見た方が……」
しかし、そうなると、どうして広瀬と連絡がつかない?
まったくどうなっている?
「……ひ、広瀬警部補と連絡がつかないというのは本当なのか?」
「――ん? あ、ああ……、そうみたいだな。心当たりでもあるのか?」
項垂れるようにして語り掛けてきた立花へと俺は視線を落す。
「彼は――、広瀬隆文は公安がマークしていた」
「どういうことだ?」
「広瀬隆文は、中国からのスパイの可能性があったからだ」
「まさか……。そんな事がありうるのか?」
「それを調査していたんだ。君が、独断専行したから全てが無駄になったが……」
立花は携帯電話を取ると電話をどこかにかける。
「私だ立花だ。すぐに広瀬の身柄を確保しろ。場所は分かっているな? 了解した。公安の威信にかけて広瀬隆文を連行しろ」
電話を切った立花は、顔を上げると――、
「そういうことだ。公安はすでに広瀬隆文を常時マークしていた。すでに場所も割れている。広瀬隆文に関しては、公安に任せて君は、中性子爆弾とやらを探しに行け。君には君の仕事があるように、公安には公安のある」
「はぁ。分かったよ」
俺は肩を竦める。
「村瀬、お前も式神を飛ばして中性子爆弾の場所を探してくれ」
「当主様は?」
「まずは諏訪湖の中心部に移動するしかないな」
正直、中性子爆弾が爆発するまで、どれだけの猶予が残っているのかすら分からない。
そうなると、移動しながら波動結界で探すのは効率が悪いというよりも実質不可能に近い。
「まったく――、面倒なことばかり起きるな」
俺は頭を掻きながら、車の外へと出る。
外には、保護した失踪者達が疲れ切った顔で俺の方を見てくる。
「優斗君。一体、何が起きているんだ?」
「親父さんは気にしないでくれ。こっちの事情だ。それと警察官がくるまで少し時間がかかるようだ。しばらくは、ここでゆっくりしていてくれ」
「それでは、何も分からない。一体、何が起きているんだ? こんな非日常、ありえない」
まぁ、都の親父さんが言いたいことも分かるが、今は、相手にしている時間が惜しい。
「あとで説明する」
それだけ言い残し、俺は身体強化をした上で、空中を蹴り諏訪湖の方へと移動する。
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