第402話
「なるほど……。それは、かなり由々しき事態だな」
おそらく、村瀬は言い間違えたのだろう。
だいたい、ファイアーセールってなんだよ? 炎をセールして、どうしろというんだ? 少し考えれば言い間違いだということに気が付くはずだ。
ここは上司であり当主の俺が村瀬の言い間違いを、それとなくフォローしてやるのが筋というものだろう。
部下の失敗は、上司の責任と言うからな。
やれやれ――、仕方ないやつだな。
「はい。かなり危険な状態です」
「――と、なると発動させた術者を見つけてぶっ殺すのが一番手っ取り早いか」
「術者? ハッカーを見つけるのは至難の業かと」
「……」
そういえば、異世界では魔法使いのことをウィザードとか、ハッカーとか言っていたな。
「そうだな……」
たしかに……、術者を見つけ出すには目視が一番良いが、諏訪市全域を覆い尽くし殲滅できるほどのファイアーウォールの使い手となると、異世界でも、大陸に数人居た大魔導士くらいなものだろう。
しかし、地球で、そんな魔法みたいなファンタジー要素が出てくるとは……。
「そうなると、魔法の方を何とかする必要があるか……」
「え?」
固まる村瀬。
「どうかしたのか?」
さすがの俺も、怪訝な感じになる。
まさか、俺が立花が居る手前、さりげなく恥をかかないようにとフォローした事に気が付いて、そういう反応をしたんだろうが……、ハッキリ! 正直言わせてもらおう。
もう少し自然に流してくれないと、俺のフォローが無駄になるだろうと!
「当主様、何か勘違いされていませんか?」
「……」
さすがの俺も無言になり続けるしか出来ない。
ほら、立花だって気が付いたのか俺を可哀想な人間を見るような目で見てきてるじゃないか!
俺が、さりげなくフォローしたというのに、俺のフォローが無駄だったな! みたいな……。
完全に同情されているぞ?
俺が庇ったのに、それを無にするような聞き方をしてくる村瀬の行動にたいしてな!
「村瀬」
「はい」
「人は勘違いをすることはある」
「そうですね」
「だからと言って、自分の勘違いをさりげなくフォローしてくれた相手の気持ちを無為にするのはどうかと思う」
「はい」
「分かればいい。分からないことは、分からない。出来ないことはできないと言っていいんだ。ミスってのは、誰にでもあるからな!」
「はい……。それでは、簡単に説明させていただきます」
どうやら、村瀬も分かってくれたようだ。
やれやれ、上に立つと大変だな。
「現在、諏訪市全域は、通信網の遮断。それに伴う交通機関の停止と信号機の停止。ガス・電気・水道関係のインフラが、外部ハッキング、もしくは物理的な暴動により封鎖されている状況にあります。これらの相称、ファイアーセールですが、現在、ファイアーセールにより米国の衛星通信回線以外を使ってでの通信は不可能になっています」
「……?」
俺は思わず首を傾げる。
それって、つまり……攻撃魔法ではないと?
「なるほど……由々しき事態だな!」
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