第390話

「そんな馬鹿な……」

「細かいことは気にするな。それより言葉で聞いていると時間が掛かる。情報端末とかないのか?」

「情報端末?」

「ああ。システムにアクセスして読み取った方が早いからな」


 警備室に入り、並んでいる機械へと視線を向けたあと――、


「ここは警備などを担当しているので……。ですが、分かる限り情報を提供します」

「そうか」

「――なら、全部、終わったあとに情報提供してもらうとするか」

「――え? それでもいいのか?」

「ああ。十分だ。今は時間がないからな。今、諏訪警察署の方から刑事が向かってきているから、そいつらに保護してもらえ」

「わ、わかった……」

「地上には既に魔物はいないから安心して上がればいい。それと逃げようとするなよ? 逃げたら――、分かっているな?」

「あ、ああ……。宮木、富来、さっさと逃げるぞ」

「分かった……」

「……(コクリ)」


 3人が納得したのを確認したあと、俺はエレベーターホールへと向かう。


「あ、あんたはエレベーターは?」

「必要ない」


 走り、エレベーターの昇降口から飛び降り、一番下に到着したところで、エレベーターの天井を破壊しエレベーターの中へと入ったあと両手で扉を開ける。


「さて、いくとするか」


 真っ直ぐに伸びている通路を走り、エアロックの扉を素手で破壊し――、さらに通路を突き進むと銃弾が飛んでくる。

 銃弾を素手で弾きながら拳銃を向けてくる男達の首を手刀で刈りとる。

 辺りに血が撒き散らされ、血の匂いが充満する中、俺は波動結界で感知した地下大空洞へと通じる扉を開けた。


「――ひっ――ひぃいいい」

「な、なんだよ……なんだよ! 何が、起きてるんだよ!」

「死にたくないなら、素直に情報を提供しろ。大蛇と失踪した人間は、向こう側の部屋にいるってことでいいのか?」


 ガタガタと震える男達に殺気を飛ばしながら聞く。


「あ、ああ……。だ、だが――、大僧正様が、生贄にするって……」

「お、おい!」


 素直に情報を提供してきた男と、それを嗜めようとした男。

 二人の関係性は知らないが――、


「そうか」


 強化ガラスで作られたであろう部屋の壁を破壊し大空洞内に飛び降りる。

そして、空中を蹴り反対側の岸壁へと移動する。

 反対側の岸壁に埋められるように建築されているコンテナのような形をした建物の壁を破壊し中へと入ったところで――、


「な、なんだ!? お、お前は!」


 白い服装の所々に施された金の刺繍。

 明らかに今までとは異なる白い服を着た男が目を見開き敵愾心ある雰囲気で見てきた。

 それと――、俺が山で出会った鱗を持つ女。

 そして、血塗れの通路に、21人の生存者の姿が見て取れた。


 


 

 

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