第385話 第三者side

 ――中南海、中国共産党本部。


「そうか、わかった。任務は失敗したという事だな?」


 執務室で電話を取っていた男は手を組み椅子に深く腰を下ろしながら、電話をかけてきた相手に対して、威圧的に答えると――、


「爆弾も余波でか……」


 男は、視線を衛星が映し出す画面を見ながら、眉間に皺を寄せる。

 画面に映し出されたのは、巨大なクレーターであった。

 そのクレーターは、諏訪市の北東から数キロ移動した場所に出現したモノ。

 桂木優斗が反物質を生成し、対消滅を行った結果、大規模な爆発が起きた痕でもあった。


「まさか、六波羅命宗に資金提供していた生体兵器が、これほどの力を有しているとは思っても見なかったな。だが――、問題は……」


 男は、バインダーに纏められていた報告書へと視線を落す。

 そこには、桂木優斗の経歴がビッシリと書かれていた。


「桂木優斗。奇跡の病院か……。神の力を有しているとあるが、まさか『玄武』を一人で殲滅できるほどの戦闘力も有しているとは……」

「それで、如何致しましょうか? 警察に捕まっている玄武は――」

「全て無かったことにしろ。今、アレと対峙するのは好ましくないからな」

「――と、申されますと?」

「何度も言わせるな。何のために日本に大使館を置いていると思っている? 今回のことは無かったことにする必要がある」

「それでは……」

「万が一の為に保険で用意しておいた爆弾が不発なのだ。――なら、例の物を起動せればいいだけの話だろう? こちらからは表立って動くことはできんからな」

「――そ、それは……、中性子爆弾を使えということですか?」

「そうだ。こちらの情報が洩れるのだけは防がなくてはいけないからな」

「それでは、どれだの人口が巻き添えになるか……」

「たかが数万人規模だろう? だったら何の問題もない」

「……ですが、それは桂木優斗と敵対する可能性が――」

「知らぬ存ぜぬで通せばよい。それよりも、今は警察に捕まっている玄武を始末する方が最優先だ。口を割られれば、それはそれで問題だからな。失敗は許さんぞ? 分かっているだろうな?」

「――ッ!? 分かりました……。それでは、すぐに同士の広瀬に連絡をします。総書記」


 そこで男は、電話を切った。


「まったく制御の効かない生体兵器なぞ危険極まりないからな。


 男は笑みを浮かべながら、党員リストへと視線を向ける」


「まったく、桂木優斗が出てくるのが分かっていたのなら、さっさと六波羅命宗は始末しておくべきだった。余計な手間を取らせおって――」


 








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