第370話

「――ひっ!」


 引き攣った表情をする兵士を見ながら、


「日本に来た理由を教えてもらっていいか?」


 俺の言葉を聞いた兵士は、目を閉じる。

 そして――、歯ぎしりをしたかと思うと何かを齧るような音が聞こえてくると共に、兵士の口元からは血が流れ出る。


「毒か……」


 俺は兵士の体に触れて細胞を操作し、兵士が絶命する前に、細胞に毒に耐性を持たせる。


「かはっ! な、何故だ! 何故に死なない!?」

「残念だったな」


 俺は兵士に向けて笑みを向ける。


「楽に死ねると思うなよ?」

「……ば、ばけもの……」

「そいつはどうも。さて――、教えてもらおうか?」

「――くっ」

「黙秘は無駄だぞ?」


 俺は兵士の感度を3000倍にして、腕を斬り落とす。

 絶叫と即死に近い痛みの信号が脳に向かうのを確認し心臓が停止する前に、無理矢理に兵士の肉体を再生させる。


「あ、ああ……」


 口元から涎を垂らし、半分、廃人のような表情をした兵士の腹を殴る。


「気絶している場合じゃないだろ? 俺の質問に答えろ」


 



 ――30分後。


 100回ほど絶命させては肉体を修復した結果、兵士は良く謳うようになった。


「名は、李(リー) 宇轩(ユシュエン)。中国共産党中央軍事委員会直属の特殊部隊『玄武』のメンバーか。広瀬警部補は、どう思う?」

「どう思う? と言うよりも……。公安の方をそっちのけの方が問題になりそうな……」


 広瀬が、地面の上に転がしてある意識を失っている立花を見て溜息交じりに答えてくる。


「仕方ないだろ。煩いんだから」

「そうですね」

「そこは同意するのか」

「まぁ、そうですね。それよりも、中国共産党が送り込んできた特殊部隊ですが、それの目的が、生物兵器というのは、しかも供述から見た目は女だという話ですが、どこまで信憑性があるのか……」

「そうだな。だが、生物兵器を奪う為に特殊部隊を送り込んできたというのなら、この兵士が話した六波羅命宗が何らかの鍵を握っている可能性はあるな」

「ただ、六波羅は諏訪市に、かなりの献金をしている宗教団体ですので、警察が関与する為には、何かしらの決定的な証拠がないと」

「出たとこ勝負でいいだろ」

「あとは、今回の拷問紛いの聞き取りはちょっと……」

「問題ない。俺が捕まえてからの記憶は消去したからな」

「――き、記憶を!?」

「ああ。まぁ、全部を消してもいいが、殺さないと約束した以上、俺は約束を守るからな」

「当主様」

「どうした? 村瀬」

「神谷警視長から電話です」

「――ん?」


 俺は、自分の携帯を取り出すが、携帯電話は銃弾の流れ弾を受けたのか画面が銃弾により割れていた。


「今度、銃弾も弾く携帯電話を作ってもらった方がいいな」

「防弾携帯ですか」

「まぁ、そうだな……」


 そんなものがあるかどうかは知らんが――。

 





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