第369話
笑顔を向けたところで、署長を含む警察官が身体を震わせたが、気のせいだろう。
それよりも――、
「当主様、分かっています。すぐに式神を使い周囲を調べます」
「頼んだ」
兵士から聞き出す時間の山の捜索は、村瀬に任せるとしよう。
気絶している兵士達をパトカーに乗せて連行していく警察官。
パトカーが去ったあと、俺は――、
「広瀬警部補は、一緒に帰らなくてよかったのか?」
「一応、警察組織の人間は一人か二人は居た方がいいだろう? 何かあった時のために」
「そうか? 別に、これで情報は逐一送っているのだから問題ないと思うが?」
「現場と会議室だと勝手は違うからな」
「――なら別に良いが」
俺は杭に括りつけてあった兵士へと視線を向けたあと、ハイエースからバケツを取り出し湖から水を汲む。
そしてバケツで汲んできた水を気絶した兵士へとぶっかける。
「ごほっ、ごほっ……、ここは……」
「地獄の入り口へようこそ」
俺は両手を広げながら高角を上げる。
「桂木警視監……」
呆れたような表情で俺を見てくる広瀬に、俺は咳をしてから、
「お前の正体を教えてもらおうか?」
「…………教えると思って――ぎゃああああああ」
まずはお話の挨拶なのだから右足の親指が切断されたくらいで大げさすぎる。
「さて、まずは話し合いをしようか? 俺が満足いかない答えか嘘を言った場合には、少しだけお仕置きするかも知れないから気を付けた方がいいぞ?」
「――お、おまえ……。いま警視監って……、日本の警察組織が、こんな拷問のような真似をして――、ギャアアアアアアア」
とりあえず軽く右足を手刀で脛の部分から切断する。
「質問しているのは俺様の方だ。お前に、俺様を詮索する資格なんて与えてはいない。正直に答えれば苦しまずに生かしてやるぞ?」
兵士に近づき、右人差し指を折りながら、にこやかに問いかける。
それに伴い絶叫が響き渡る。
「桂木警視監、いくらなんでも……止血もしない状態で……」
脛から切断された足からは血が流れ続けており、兵士が縛り付けられている杭が刺さっている地面は血が滴っている。
「大丈夫だ」
俺は兵士の身体に触れると共に肉体を瞬時に再生させる。
「――! か、体が……」
突然、痛みが無くなった事に驚いた兵士と、
「再生した!?」
肉体が修復した場面を見ていた広瀬が口を揃えて、それぞれ思ったことを口にした。
「――な? 何度でもお話が出来るから問題ない」
「え? こ、これって……、生き地獄なのでは……?」
「流石は当主様。非人道的な行いは先代様の追従を許しませんね」
「俺は無関係の人間を巻き込むような真似はしてない。――さて、じっくりと話し合いをするとしようか?」
そう、エンドレス尋問。
「ちなみに発狂することも意識を失うことも自殺も許さないからな? 素人と違って、俺は、こういう手合いは得意だから安心しろ」
俺は笑顔を向けながら、兵士を安心させるように語り掛けた。
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