第368話

「この者達は、中国人民軍の兵士だったら、君はどうやって責任を取るつもりなんだ? 今の弱腰の日本政府が、中国からの抗議を受けたら、マスコミに叩かれたらどうするつもりだ?」

「何か勘違いしているようだから言っておくが、先に攻撃を仕掛けてきたのはこいつらだ。俺は最初に話し合いで決着をつけようとしたのは、常に情報を確認できたのだから分かるはずだろう?」

「……だが!」

「それに完全武装の上に、他国に兵士を展開させるという行為は、宣戦布告に他ならない。そのくらいは、この世界でも常識だと俺は思っているが?」

「そういう理屈ではない! 中国大使館から何か言われたらどうするつもりだ! 日本の食糧事情や経済だって中国に依存しているんだぞ!」

「それが何か問題でもあるのか?」

「君は、自国を危機に貶める可能性がある行動を取ったと言っているんだ」

「ほう……」


 俺は、そこで立花の方へと身体を向ける。


「俺が何の覚悟もなく戦っているというのか?」

「――何?」

「もし仮に、中国が宣戦布告をしてくるようなら、俺は地球上から中国を消すくらいの覚悟はあるぞ?」


 俺の言葉に、周囲がざわつく。


「――な! じ、自分が……自分自身が何を言っているのか……君は理解しているのか? 中国を消し去るということは10億以上の人間が住む国を消すということは……」

「ああ、宣戦布告してくるんだろう? だったら、皆殺しに決まっているだろう? この俺がいる国に宣戦布告をしてくるって事は、この俺様と戦うってことだからな。相手を殺す覚悟で喧嘩を売るってことは、自国民が皆殺しにされる覚悟があるから戦争を仕掛けてくるんだろう?」

「く、狂って……」

「まぁ、たらればの話をしても仕方ない。その時になったら、そういう対応をするだけだ」


 擦れ違いざまに、立花の肩に手を置き、俺は軽く殺気をぶつける。

 それだけで、立花は失神して倒れる。

 まったく不甲斐ない。

 魔王軍四天王と、その配下なら、俺の殺気程度で気絶するような奴はいなかったがな。

 

「署長」

「――な、なにか……おほん! 何かな? 桂木警視監」

「時間がないから、ここで尋問させてもらってもいいか?」

「尋問?」

「ああ。中国人民軍かどうかはハッキリしないからな。きちんと尋問して証言を取っておきたい。それに、何かしら知っているようだからな」


 少なくとも、この場に完全武装の兵士が居たのだから、確実に何かあるのは明白。

 

「ここには、裁判所も何もない……」

「あ、それなら言い間違えた。拷問するから――」

「ご、拷問!?」


 吹き出す署長を無視し、俺は近くに生えている直径70センチほどの大木を素手で根本から斬り取り倒れ込んでくる木の枝葉を手刀で払っていく。

 そうして一本の杭を作ったところで、キャンプ場に突き刺す。

 全員が、俺の一連の行動――、それを口を開けたまま見ている中で、命令を出していた隊長格と思わしき兵士を担ぎ上げハイエースの中から持ってきたロープで杭に縛り付けた。


「署長。それじゃ、この兵士達が誰なのかは俺がしっかりと聞き出しておくから、署長たちは他の兵士達を拘束して連れていってくれ」

「そ、その兵士は……」

「大丈夫だって、殺しはしないから。俺、こういう他人から何かを教えてもらうような話し合いは得意だからな」




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