第365話
「――なら、本当にお前らが優勢なのかどうか見せてもらおうか?」
掴んでいた男を地面の上に投げ捨てる。
「――げほっげほっ。今だ! お前ら! こいつを殺せ!」
ナイフを抜き走り寄ってくる兵士を見据えながら、俺は拳銃から放たれた銃弾を左手で受け止める。
「なっ! 銃弾を!?」
さらに、突き出されてきたナイフの刃を手刀で斬り裂き、それと同時に左回し蹴りを近距離戦を挑んできた兵士の腹部へと――、
「ぐはっ!?」
内臓を破壊した兵士が口から血反吐を撒き散らしながら、地面と垂直に吹き飛び近くの木に身体を打ち付け力なくズルズルと地面へと崩れ落ちていく。
「人間離れした強靭な肉体――、さらに銃弾を弾く能力といい……、ま、まさか……。日本政府の特殊部隊か!?」
何を勘違いしているのか……。
というより、そんな部隊があるのか? 知らんが――。
「接近戦は控えろ! 撃て! 撃て! 撃て!」
木に激突して動かなくなった兵士を二人かかりで抱き上げ、俺から距離を取っていく兵士。
そして、その撤退を援護するかのようにアサルトライフルで弾幕を形成する兵士達を見ながら、俺は悠然と歩く。
その間にも飛来してくる数百発の銃弾。
それらを素手で弾きながら、俺は口を開く。
「まったく――」
どういう意図で、ここに中国軍がいるのか知らない。
だが、日本国内で実弾が入った拳銃や自動小銃を所持しているという事は非合法と見て間違いないだろう。
「どうする? 捕縛するか?」
別に皆殺しにしてもかまわないが、それだと情報が得られない。
すでに7割近く山を探索していて、まるで情報がないのだから、このまま逃がすのはもったいないし口封じもな……。
とりあえず、俺は対策室に確認するが――、
『桂木警視監、まずは自身の身の安全を――』
「俺は問題ない。それよりもどうする?」
『それでは武装集団の無力化をお願いします』
「了解した」
一応、クライアントから仕事を受けている身だからな。
俺の裁量で殺すってことは控えるのが冒険者ってモノだ。
「――な、なんだ? アイツ、銃弾が効かないぞ? どうなってやがるんだ?」
「化け物が! これでも喰らえ」
3つほどの手榴弾が、俺の足元に落ちて爆発する。
「や、やったか……。――なっ!?」
「まったく――、高かったというのに……、また購入しないと駄目になったろうが……」
爆風で軍用ブーツなどが、吹き飛び肉体にも損傷があったが瞬時に修復させていた。
それを見た中国軍の兵士の動きが停まる。
「な、なんなんだ……。我々は、一体――、何を相手に――」
俺のことを理解できないと言った様子で恐怖の眼差しで見て来ていた兵士達が、一人逃げたかと思うと、次々と、俺から離れていく。
「まったく、別々の方向へ逃げるなと――」
身体強化したまま、逃げていく兵士に一瞬で追いつく。
「ば、ばかな――」
兵士の肩に手を置いた所で、兵士は恐怖を超えた絶望な眼差しで俺を見てくる。
「今回は殺したりしないから安心しろ」
そこで、俺は男の意識を刈り取る。
1分ほどで兵士全てを気絶させたところで、骨を砕く音が聞こえた方向へと視線を向け走る。
「おいおい――、ゾンビかグールか?」
波動結界を展開し骨が砕けた方向へと意識を向ければ、熱エネルギーを感じないのに動いている物体を探知する。
それは、異世界で感じた事がある死霊系の反応。
「――なんだ? あれは……」
俺が倒した兵士の場所へ辿り着く。
そこには、警察官の服を着た生命力を感じない生ける屍が存在していた。
「兵士を喰っているのか?」
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