第351話
書類か……。
エリカがテーブルに置いた書類は、俺が視線を向ける前に突然、青い炎を立てて燃え上がり灰も残さず消える。
「白亜。何をする?」
「妾を差し置いて、そのような真似は良くないのじゃ」
「むーっ」
「何の書類だ?」
「マス――、むぐぐぐぐ」
答えようとしたエリカの口を――、頭ごと尻尾で包む白亜。
一体、何をしているのか。
「ご主人様、妾がパンドーラとやらの遺体を取ってきよう」
「そうか?」
「うむ。そなたも、それでよいな? パンドーラとやら」
「そ、そうね……。貴女ほどの、神力があるのなら問題ないと思うわ」
「それでは、案内するとよい」
「大丈夫なのか? お前の場合は、妖力とか言ってなかったか?」
「これでも、ご主人様と契約したことで空弧となったからの。神通力も使えるようになったのじゃ。そして神通力というのは霊力よりも上の次元の力。なので、霊力を使える人間を選定せずとも、福音の箱に干渉される事は少ないのじゃ」
「それなら、白亜に任せるか」
何かしらの譲歩を引き出してくるエリカよりは、白亜に任せた方がいいだろう。
だが――、
「俺から依頼する以上、何かしらの依頼料を払いたいと思っているが?」
「ふむ……。それならば、妾のために神社を建ててくれると嬉しいのじゃ」
「神社を?」
「うむ。それで、妾は十分」
「分かった」
白亜は、笑顔で頷くと共に、酸欠で意識を失ったエリカをソファーへと寝かせた。
それから、白亜とパンドーラは、箱の中へと吸い込まれていき、10分ほどで戻ってきた。
もちろん干からびたミイラのような遺体を尻尾に包んで。
「ご主人様。これで問題ないかの?」
「パンドーラ。コレが、お前の遺体でいいのか?」
俺は、白亜が床に置いたミイラに近づく。
「はい。私の遺体です」
「なるほどな……」
即身仏というかミイラのような遺体近くに膝をつき、身を掲げる。
「なら、始めるか」
「どうやるのですか?」
空中に浮かんでいたパンドーラが、俺の横まで来ると囁いてくる。
「とりあえず遺伝子情報が必要だからな」
俺は手刀をパンドーラの遺体目掛けて振り下ろし、ミイラの首を両断する。
「え……」
「ご、ご主人様?」
「黙って見てろ」
二人を黙らせ、俺はパンドーラの遺体の脊髄の断面を見る。
「問題ないようだな……」
脊髄の骨の一部を指先で穿りだし、口に入れ噛み砕く。
「ご、ご主人様……?」
「ど、どういうことなの? 伊邪那美様?」
「黙って見ているといい」
すでに経験済みな伊邪那美は顔色一つ変えずに俺の方へと視線を向けてきている。
そんな視線を受けながらも、俺は遺伝子情報を解析していく。
「なるほど……、ずいぶんと大雑把な神様だな」
遺伝子情報の解析を終えたあと、俺はパンドーラの遺体に手を当て、肉体を修復していく。
わずか20分ほどで肉体を修復を終えたところで伊邪那美へと視線を送る。
「ふむ、多少の差異はあるようだが、器としては申し分ない」
「そうか」
「――え? こんなに簡単に肉体の修復をしてしまったの?」
「まぁ、こやつが規格外なだけだからの」
褒めているのかどうか分からない言葉で、パンドーラに答える伊邪那美。
「――さて、桂木優斗。いつも通りやってもらえんか?」
「いいのか?」
コクリと頷く伊邪那美。
「よし、パンドーラ。これから肉体に精神を定着させるから、ほんの少しだけ痛いから我慢しろよ?」
「え?」
きょとんとするパンドーラの頭を掴み、俺はパンドーラの魂を再生させた肉体に押し付けながら、神経を繋いでいく。
もちろん、その痛みは想像を絶するモノだが、伊邪那美も通った道だから問題はない。
全てが終わり、魂の固定も済んだところで、俺の目の前には、肉体を手に入れたが縄でぐるぐる巻きにされたパンドーラが床の上に転がっていた。
口からは泡を吹いているが、特に問題はないだろう。
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