最強の英雄は幼馴染を守りたい

第349話

「神社庁が隠蔽しようとしても、人の口に戸は立てられないということか」

「そう」

「まぁ、別に言ってもいいと思うが――」

「それは困るのじゃ！」

「あー、伊邪那美の方が困る系か」

　たしかに、エリカの話から総合すると神が顕現したとなれば大事だろうからな。

　そうなると伊邪那美も困ると言う事か。

「まったく、お主とは違うのだぞ。お主ならば国を相手にしても身を守れるから良いが、妾はそうではないからの。――と、言う事でエリカとやら、黙っておくであろう？」

　扇子を空中から取り出し口元を隠した伊邪那美が、そう語り掛ける。

　それに対して、エリカの表情が凍り付く。

「……も、もちろんです」

　伊邪那美が釘を刺したところで、俺の方を見てくる。

「――さて、桂木優斗」

「ん？」

「例の件であるが、頼めるか？」

「そうだな……。エリカ」

　声をかけると、未だに身体を震わしているエリカ。

「ま、マスター……」

「はぁ……、そんなに怖かったのか？」

「当たり前。神は根源の恐怖も司っている。マスターは、何も感じない？」

「まぁ、気にしていたら神殺しなんて出来ないからな」

「……さすがはマスターなのじゃ」

　白亜の顔色も優れない。

　ただ、エリカよりは影響は少ないように見える。

「白亜は、大丈夫なのか？」

「妖力的には神に近い格を有しているのじゃが……、内包している根源の違いで影響は受けるのじゃ……」

「なるほど……。神として存在しているのと、あとから神に近い力を手に入れた存在では、違うという事か……」

「そうなるのじゃ」

　たしかに言われてみれば異世界でも女神や、眷属神に他の属性を司っている神も、現地人が害を及ぼすことは出来なかったからな。

　まぁ、俺は敵対した奴は、神であっても殺す事にしてるから気にしたことは無かったけどな。

「ふむ。エリカ、白亜。とりあえず福音の箱の中に入ってパンドーラの遺体を取ってきてくれ」

「……マスター。今、何と？」

「だから、福音の箱の中に存在しているパンドーラの遺体を持ってきてくれ」

「…………その遺体をマスターは何に？」

「コイツの身体を修復する約束だからな」

　俺は、空中に浮いているパンドーラを指差す。

「よろしくお願いしますね」

　パンドーラは、真っ青な表情のエリカに視線を向けられるとニコリと笑みを浮かべて、鈴の音が鳴るような美しい声で頭を下げる。

「これは命令？」

「命令というかお願いだな」

「……マスターは卑怯。でも、マスターと契約を結んでいる以上、力を渡されているから断るのは筋に反している」

「なら、OKってことか？」

　コクリと頷くエリカ。

「それでは、幸太郎が福音の箱を持ってきたら始めるとしようか」

　そう、伊邪那美は静かに言葉を発した。