第336話

「それで、優斗は、これからどうするの?」

「どうするって言われてもな……」


 俺は、神楽坂不動産を出たあと、妹に少し帰宅が遅れると連絡を入れたあと、都と一緒に駅に向かっていたが、そんな中で、都が聞いてきたが――。


「そういえば優斗って、病院でも開いた方がいいと私は思ったのだけど……。だって怪我とか治療していたよね?」

「ああー」

「何、その言い忘れていましたみたいなリアクションは」


 都に話す必要はないと思っていたが、奇跡の病院を始めたら、確実に都や純也は分かるだろう。

 先に口止めの意味合いも込めて伝えておくのがベストか。


「都は山王総合病院って知っているか?」

「うん。山城綾子先輩が入院していた病院よね?」

「そこを、今度買い取って、医療行為を行うことにしたんだよ」

「え? 優斗って、医師免許持ってないよね? それって、大丈夫なの?」

「まぁ、大丈夫なんじゃないのか?」


 たしかに、都の言う通り、医師免許を持ってない人間が医療を行う行為は、どうなんだ? と、思うが――、そこは非合法的に何とか出来そうな気がしないでもない。

 むしろ非合法的にしなければ困る。


「まぁ厚生省や、外務省が既に動いているからな。たぶん、大丈夫だと思うが……」

「え? 省庁も関与しているの?」

「ああ。むしろ国が率先して動いているまであるからな」

「国って……、優斗の力って国とかには神の力を手に入れたって事で説明してあるのよね?」

「そうだな」

「すごいのね……。優斗の病院って、保険とか適用されるの?」

「今は、国が管轄しているから閉鎖状態らしい。ただ、俺が奇跡の病院として開業させるときには、以前の医師や看護師を全員雇用する方向に持って行くから、通常の医療に関しては、保険適用にする予定だ」

「それって、通常の医療以外はしないってことなの?」

「そうだな。異世界で得た力を使った医療行為に関しては、別の報酬を貰う形になっているな」

「それって、いくらくらいなの?」

「総資産の1割だな」

「1割って……、資産が1000万円だったら、どんな病でも100万円で治療するってこと?」

「平たく言えばそうなるな……」

「お金持ちである方が払う額が増えるのね。でも、累進課税みたいな事して恨まれない?」

「嫌なら受けなければいいだけの話だから問題ない」

「そうなのかなー。優斗、正体を隠して医療行為した方がいいんじゃないの?」

「ふむ……」


 俺の予想だが、すでに俺の正体はセレブの連中の間では、共有されていると思うが……。

 今更、正体を偽ったところで、どうにもならないと思う。


「たぶん、国が守ってくれると思うぞ」

「優斗、国のことって信用してないよね?」

「まぁ、信用はしてないが利用できるとは思っている。それに、俺が金持ち相手に医療行為をすれば、国にも納める金ってのは増えてくるからな。あとは陰陽庁の運転資金も稼がないといけないし、いろいろと大変なんだよな……」


 

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