第335話

 つまり、人を外見で判断する人間ってことか?

 いや――、この地球だと異世界と違って16歳の年齢の子供が金を持っている方がおかしいか……。


「まぁ、あれだ。異世界と違って第一印象、外見で顧客かどうかを判断するのは仕方ないと思うぞ?」


 俺の言葉に、きょとんとする都。


「どうかしたのか?」

「ううん。優斗なら怒ると思っていたから……」

「さすがに怒らないだろ。俺だって、こっちの世界の常識くらいはある。日本に住んでいる学生が家を買いたいって店頭に来たら冷やかしに思うからな」

「そうなんだ……」


 しばらくすると、安田という不動産の店長が、ノートパソコンと、いくつかの分厚いファイルを手に戻ってくる。


「都お嬢様、お待たせしました」

「購入するのは優斗だから。優斗に説明してね」

「畏まりました。それでは桂木様、予算は10億円程と言う事で伺っていましたが、それは銀行からの借り入れ金を含めてと言う事で宜しいでしょうか?」

「いや、一括で払う金額だ」

「――い、一括でございますか?」


 都の方を見る店長は、戸惑った様子を見せているが――。


「預金残高が確認できます写しなどは御持ちでしょうか?」

「必要なら持って来させるが……」

「持って来させる? もしかして、何か事業をされているのですか?」

「まぁ、それに近いモノはあるな」


 実際に運営しているのは、陰陽庁と、病院くらいなモノになるが、どちらの情報もおいそれと外に出せるモノではないのが苦しい点だな。


「……分かりました。――では、即金で払って頂けるという事で話を進めたいと思いますが、それでよろしいでしょうか?」

「そうだな」

「それでは、ご希望のエリア、路線などはありますか?」

「まずは、千葉市中央区エリアで、10億円以内で購入できる一軒家でいい。あとは、出来るだけ部屋数が多い方がいいな」

「できるだけ多くですか……」


 てきぱきと検索していく安田という男。

 

「それでは、いくつかピックアップ致しましたのでご確認ください」


 渡されたノートパソコンの画面に表示されている一軒家の一覧。

 価格は高くても3億円程度。


「都の家ほどの邸宅はないんだな」

「うちって20部屋くらいあるから、そういうのって普通は売りにでないと思うわ」

「まぁ、オーダーメイドって感じだからな……」


 時間があれば、俺も家を建てるという方向性を考えてもいいんだが、エリカや白亜が一緒に暮らしている以上、何か月も待てないからな。

 そうなると中古の一軒家を買うのが理に叶っているというか。


「優斗、これなんていいんじゃない? うちから近いし」

「うちって都の家からなんじゃないのか?」


 よく見てみると住所が、都の家の隣になっている。

 あの辺は、高級住宅が多いから、通り過ぎるだけになっているが、静かな場所ではある。


「なるほど……。広さは8部屋か。システムキッチンや30畳のLDKがある事を考えると、いいかも知れないな……。価格は、2億8000万円ってところか」

「内見を致しますか?」

「そうだな」

「それでは、何時頃を予定されますか?」

「今からだと、日が沈むからあれか……。明日の昼でも大丈夫か?」

「優斗、学校」

「……そうだな。それじゃ、再来週の土曜日とかは大丈夫か?」

「畏まりました。それでは、連絡先と現在のお住まいの御住所を記載してください」


 渡されたメモ帳に、携帯電話の番号と住んでいる住所を記載し渡す。


「では、お時間の方は何時頃にお伺いすれば宜しいでしょうか?」

「再来週の土曜日だと……」

「お昼くらいは大丈夫ですか? 安田さん」

「可能です。都お嬢様」

「お、おい。都」

「内見は、お昼頃からがいいのよ? 優斗」

「そうなのか?」

「うん」

「その通りです。午後からは日当たりが良くなりますので、部屋の明るさや暑さが分かりますので、内見される方の大半は、お昼以降の方が多いです」

「なるほど……」


 持ち家に関しては、俺は知識がない。

 ここは、不動産会社のお昼からの内見に乗っておいた方がいいだろう。

 都の親父が経営している会社系列でもあるし、都を通しているから変な事はしてこないと思うからな。


「それじゃ、それで頼む」


 


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