第334話

「そ、そうか……」


 まぁ、都がそう思うのなら否定する事もないか。




 授業も終わり、二人で校舎から出たあと駅へと向かう。


「そういえば優斗」

「どうした?」

「家って見つかったの?」

「いや、ぜんぜん――」

「予算っていくらくらいなの?」

「そうだな……10億円くらいだな?」

「……あれ? 優斗って、もしかして、かなりお金持っているの?」

「以前に言わなかったか?」

「うーん。聞いたような聞いてないような……。警視監の身分は持っているって聞いたけど、それって異世界で得た力で稼いだの?」

「まぁ、そうだな……」

「へー。それなら、神楽坂不動産の方でも見てみる?」

「そういえば、都の親父さんは不動産も手掛けているって言っていたな」

「うん。本当は、お父さんが対応してくれたら良かったけど、そうじゃないなら直接、不動産会社に赴いた方がいいと思うのよね。これから時間ってあるの?」

「まぁ、あるが――」

「そう、それじゃあ、今から行きましょう!」


 都に案内されたのは、神楽坂不動産のオフィスは、船橋駅から徒歩2分のビル。

 フロアを貸し切っている事から、それなりの規模だというのは想像がつく。

 フロアの広さは、コンビニで言えば店内面積の4倍と言ったところだろう。


「それでは、御案為します」


 俺達の会話の合間に話しかけてきた女性社員が、事務所内を案内してくる。

 女性に案内されたのは、パーテーションで区切られた場所で、外からは俺達の方を見ることができないように配慮されている一室。

 

「それでは、担当の者がすぐに来ますので少々、お待ちください」

「わかったわ」


 お辞儀をして出ていく女性社員。


「それにしても、ずいぶんと広いオフィスだな」

「千葉支店もあるけど、千葉県内だと船橋支店が一番広いの」

「広ければ、それだけ扱っている物件も多いってことか?」

「それもあるけど、優斗って学生って見えるから、学生が何億ものお金を動かせるって、変な目で見られるでしょ?」


「まぁ、たしかに……」


 異世界でも、才能のない俺みたいな冒険者が大金を手に入れたら、襲撃とかよく受けていたからな。

 個人情報の管理は重要といったところか。


「都お嬢様。本日は、物件をお探しと言う事でしたが……」

「安田さんが紹介してくれるのかしら?」

「ええ。ところで、ご購入を希望されているという事でしたが、都お嬢様が?」

「いえ。こちらの桂木優斗君よ」

「桂木優斗様ですか? 失礼ですが、御年齢をお伺いしても?」

「16歳だ」

「お嬢様……」

「大丈夫だから。物件を見繕って持ってきてくれるかしら?」

「ですが、ローンは16歳の方では……」

「安田さん。優斗は、私の伴侶なのよ? あまり恥をかかせないでもらえるかしら?」

「――は、はんりょ……ですか?」

「ええ。そうよ。分かったのなら、すぐに物件を持ってきて! すぐに入居できるもので、予算は10億円付近で」

「分かりました」


 部屋から出ていく男性社員。


「都」

「えっと、彼は安田さんって言って、神楽坂不動産船橋支店の店長をしているの。以前に何度かパーティで会った事があるんだけどね。色々と面倒な人なの。能力はあるって、お父さんは言っていたけど……」

「なるほどな」






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