第337話
「えっと……陰陽庁って、阿倍珠江先生がトップだったって前に優斗が話してくれた組織よね? そこの運営資金って省庁って名前がついているのだから国から出るんじゃないの?」
「ああ、その話か……。じつは――、陰陽庁は解体する予定だったらしいんだが、純也の件もあるから、残しておくことにしたんだ。だけど、国からは予算が降りないから、俺が運転資金を捻出することになって、今に至るって感じで、3000人近くの部下を持つ形になっている」
「3000人?」
「もちろん、末端の協力者を入れたら10倍になりそうだからな……。少なくとも年間1000億円程度の予算は稼がないといけないという大変事態に直面している」
「年間1000億円って……。それで奇跡の病院で稼ぐことにしたの?」
「そんな感じだな」
「純也とゴタゴタしているって思っていたけど……、優斗はやっぱり友達思いなのは昔から変わらないのね!」
そのへんはどうだろうな。
純也が陰陽師の力を手に入れたから陰陽庁を存続させておこうと思ったのは事実だが、そこに、友達の為だからという思考が入り込んだかどうかは微妙なラインだし。
「どっちにしても都合がよかったからな」
「都合?」
「ああ。俺もよくは知らなかったが、異世界から戻ってきたら、この世界は奇想天外な事だらけだったからな。身内を守るためには、ある程度の組織を有しておいた方がいいと、その方が効率がいいと思ったから陰陽庁のトップを就任しているだけだからな。まぁ、正確には、金で買ったというのが正確だが――」
「お金で省庁を買ったの? 省庁って購入できるものなの?」
「日本政府が許可を出したからなー」
自分で答えて思ってしまう。
日本政府は、ずいぶんと俺に譲歩してくれているなと……。
「すごいわね。国内の機関をお金で一人の国民に売るなんて……」
「俺も都と話していて、いま、そう思ったところだ」
まぁ、日本政府も官房長官みたいな奴はいるから、一枚岩ではないが少なくとも柔軟な思考を持った奴が閣僚にいるのは間違いないと思う。
異世界でも、冒険者ギルドから独立する冒険者が居た時、揉めると戦力低下につながるからと、即断即決からの許可を出していたギルドマスターもいたからな。
「今回の夏目内閣は、ニュースでは叩かれているけど、もしかして有能?」
「それは分からないが、俺に配慮してくれているのだけは分かるな」
会話しながら船橋駅についた俺達は快速列車に乗り千葉駅へと移動する。
そしてタクシー乗り場に移動したところで――、
「そういえば、さっき聞きそびれたけど優斗は、これから帰宅するの?」
「――いや、一度、職場に立ち寄ってから帰宅だな。都はタクシーに乗って帰るといいぞ」
「私も! って、それは無理よね」
「だな。何度も警察関係者じゃない民間人を建物に入れる訳にはいかないからな」
「うん……」
俺は、少し離れた位置で、こちらを見てきている白亜へと目配せしたあと、都をタクシーに乗せる
タクシーが走り去ったのを確認したあと、俺は千葉県警察本部へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます