第326話

自宅に戻ってきて、数分。

リビングのソファーには、満足な表情の3人がウトウトとした様子で座っていた。

どうやら、ホテルのレストランという場所での食事というのは思いのほか疲れたらしい。


「もう、食べられないのじゃー」


 若干、一人、ジャージに着替えて寝ている奴がいるが、それは置いておくとしよう。


「胡桃、エリカ、眠いなら部屋に戻って寝ろよ?」

「うん……」

「了解。ますたー……」


 二人共、お腹いっぱいのようで動きたくないようだ。


「仕方ないな」


 まだ5月中旬とは言え、夜になると冷える。

 半分寝ている妹とエリカを順番に、それぞれの部屋まで運んだあと、俺はノートパソコンを起動して物件を見ていく。


「やっぱり、ネットで出ている中古物件で、これと言ったモノはないな……」


 一人呟きながらも、やっぱり店舗まで足を運んで調べないと良い物件は見つからないかと考える。

 

「さて、明日の天気でもチェックしておくか」


 大手の情報サイトを開いたあと、天気のアイコンを探すが――、その際に、あるニュースが目に止まる。


「三峰山遭難事件か……。たしか、都の親父さんも、失踪とか遭難がどうたらとか言っていたな……。ま、俺には関係のない話だな」


 俺は、天気予報を確認したあと、自分が使っている部屋に戻った。




 翌日は、普段通りの朝がきて4人で朝食を摂る。


「ご主人様。どうして、妾だけリビングに寝かせたままだったのじゃ?」

「お前は、身体を壊さないだろ」

「何だか……妾の扱いが雑う!」

「マスターが、ベッドまで運んでくれた?」

「まあな」


 俺は自分で焼いた食パンを口にしながらエリカの問いに答える。


「胡桃も!」

「そうだな」

「えへへー」


 エリカも、妹も笑みを浮かべている。

 ただ一人、白亜は不満そうだが、まぁスルーしておけば問題ない。


「そういえば、お兄ちゃん」

「どうした?」

「エリカさんのことだけど、昨日から私の学校に来ているの」

「そりゃ、胡桃の護衛だからな」

「護衛って、どういうことなの?」

「俺が金持ちになったから色々な組織に狙われるかも知れないってことだ。ただ、俺に直接攻撃を仕掛けてくるような真似をする奴は――、そんな奴はいないはずだから、身内を人質にして要求をしてくる可能性がある。そこで、胡桃には護衛をつけた」

「それって、かなり危険なの?」

「分からないが、お前に何かあったら、相手を殲滅することにしているから、そのためにもエリカ、護衛はしっかりな」

「マスター。任せてほしい」

「それにしても学生で胡桃の中学に入学したのか?」

「違うの、お兄ちゃん。エリカさんは、ロシア語を教えるという名目で先生として入ってきたの」

「まじか……。11歳なのに……」


 さすがの俺も驚く。


「教員免許は持ってる。問題ない」

「そ、そうか……」



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