第299話

 ――で、由美ちゃんって誰だ?

 そんな事を思いながら食事を摂りつつ、


「そういえば、優斗って、勉強は何が分からないの?」

「理数系以外は全部、少しだけ分からないって感じだな」

「それって以前に、私が勉強教えていたけど、そこからの続きでいいの?」

「――ん? それって最近のことか?」

「そうだけど?」

「……」


 俺、都に勉強を教えて貰っていた事があったか?

 だが、都の言い方だと、俺に勉強を教えていた事があったみたいな素振りだよな。


「優斗?」

「――いや、何でもない。たぶん、そんな感じだ」

「ふーん。優斗、自宅に来るなって言っていたけど、私、また行ってもいいの?」


 そんなことを俺は都に言ったのか?

 くそっ、記憶がかなり食われているな……。


「そうだな……」

「それじゃ、今日から行ってもいいの?」

「出来れば頼む」

「そう。それじゃ、今日からお泊りにいくね!」

「いや泊まりまでしなくていいぞ。おじさんやおばさんが心配するだろ?」

「ううん。大丈夫だから。それに以前と同じくらい勉強が出来ないとなると付きっ切りで勉強を教えないと、優斗、中間考査落とすことになると思うし……優斗?」

「いや。俺の家とか狭いから、そろそろ引っ越しをしようと思っていたんだが……」

「いいの? 勝手に引っ越しして――」

「アディールや、白亜が一緒に暮らすことになったからな。さすがに4人も一緒に暮らしている中で、都が泊まりに来るとなると、さすがに手狭になる。だから――」

「でも、優斗、16歳よね? 勝手に家とか借りられるものなの?」

「借りずに家を買うから問題ない」

「そんな事出来るの?」

「神谷に話を聞いた感じだと、ニコニコ現金一括払いなら可能らしいからな」

「そういえば、優斗って、かなりの高給取りなのよね……」

「まあ、そうだな」

「優斗って、いつから警察官になったの?」

「最近だが、それなりの額は国が用意してくれている。異世界から帰ってきた人間への特別待遇ってやつだな」

「そう……。――でも、家を購入するってことになると、遠いところに引っ越す感じになるの?」

「その辺は、不動産次第だな」

「そういえば、千葉駅前にはタワーマンションがあるよね!」

「ああ。あの業務用スーパーがある建物か」

「そうそう。あそこって、結構、高いわよね……」

「――でもな……、タワーマンションとか騒音とか煩そうだし……」

「外国人の子もいるものね……。あとは妖怪とか……」

「そうだな。だから、出来るだけ一軒家がいい。特に庭の広いところがベストだな」


 カツカレーを食べ終わり水を飲む。


「私のお父さんに聞いてみようか? 不動産も高級住宅前提の取り扱いをしているって、お母さんに聞いた事があるから」

「そうだな……。頼めるか?」

「うん。それじゃ連絡しておくね」


 都が携帯を取り出し、電話をかける。

 しばらくして――、


「今日、優斗と話をしたいって。今日とか大丈夫?」

「学校終わってからでいいのか?」

「うん。私も立ち会うから安心して!」

「いや、別に父親だけで問題ないぞ?」

「えー」

 

 


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