第298話

 登校し3時限目から、授業に出たのはいいが――。


「まったく分からん……」


 理数系は、戦闘面で役に立つから多少は理解できるが、それ以外の――、とくに英語とかは、壊滅的なほど知識が残っていない。

 おそらく、力を解放した時に代償として、戦闘に必要ないからと回収されたんだろう。


「優斗。学校に来たのね?」


 机の上に倒れたままの俺に話しかけてくる都。


「都か……。俺は、もう駄目かも知れない……」

「そんなに勉強が分からなかったの?」


 その都の言葉に俺はコクリと頷く。

 正直、レッドアラートを通り越して、デッドゾーンに両足どころか腰まで浸かっている状態と言っても過言ではないまである。


「仕方ないわね。ほら! お昼時間だから、ご飯にでもしましょう?」

「そうだな……」


 都の言葉に頷きながらも俺は席から立ち上がる。


「優斗は、今日は食堂なの?」

「まぁな……。――と、言うとか、山王高等学校は基本的に食堂で食事を摂るのがメインだっただろ」


 日向駅の近くには食堂どころかコンビニすらまともに存在していなかった事もあり、学生の昼食は、主に食堂で提供されていた。


「都は、弁当か?」


 俺は都が手に持っている弁当箱を包んでいる包みを見るが――、


「食堂で一緒に食べましょう!」

「別に、俺に付き合わなくてもいいんだぞ?」

「ううん。大丈夫だから、きにしないで!」


 俺は、周囲の男達から向けられる嫉妬と言う妬みや憎悪な眼差しを受け止め乍らも――、


「そうか」


 そう答えることしかできない。

 へんな男から幼馴染である都を守るのも俺の仕事だからな。

 食堂に到着したあとはカツカレーの食券を購入し、食堂のおばちゃんに渡して、カツカレーを受け取る。


「優斗」

「どうした?」

「3人前って食べられるの?」

「まぁ、まだ身体が本調子じゃないからな」

「そうなのね」

「以前の戦闘で、かなり体力を使ったからな。まずはエネルギーの補給をしないとな――と、いただきます」

「それって胡桃ちゃんを助けた時の?」

「まぁな……」


 スプーンを片手にカツカレーを食べ始める。


「そういえば、最近は給食センターが給食を管理しているのに珍しいよね」

「学校側の指針なのかも知れないな」

「あっ! たしか以前に入学パンフレットに食育を推進しているって話あったものね。たしか給食センターの食事は味が微妙だったって生徒から改善要望があって対応する事にしたって書いてあったけ?」

「そうか?」

「優斗が自慢げに説明してくれたことだけど?」

「そんなことが……」

「だって優斗は食べることが好きだったじゃない?」

「……そうだな」

「そういえば由美ちゃんが言っていたけど、私達が今、通っている建物って元々は小学校だったんだって」

「それは初耳だな」

「以前にも優斗に言ったけど? それでね、昔の学校って小学校でも給食は自校で作っていたらしいの」

「なるほど、それで簡単なリフォームだけで食堂を作ったということか?」


 たしかに、校舎のあっちこっちは、簡易的な修繕だけで辛うじて使えるという感じであったが、食堂だけは内装がやけに綺麗だと思った。

 

「まぁ、飯が上手ければ俺は文句ないけどな」


 


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