第297話
「――と、いうことがあったんだ」
千葉県警本部に登庁した俺は、神谷に先日、自宅であったことを話した。
「何と言うか……、桂木警視監の周りは色々と面倒なことになっていますね」
「まぁ、何とか誤解は解けたがな……」
「それは良かったですね」
「そうだな」
俺は、溜息をつきつつ、神谷に言葉を返す。
「そういえば、桂木警視監」
「どうした?」
「病院を借り受けた件について、千葉県医師会から苦情が来ていますが?」
「勝手に行ったという事にか?」
「はい。ただ――、勝手な行動を取ったというよりも一つの病院に200億という大金を渡したというのが気に入らないのが原因のようです」
「つまり嫉妬ということか?」
「有り体に言えば、そんなところです」
「そんなのは無視しておけばいい」
「――ですが……。医師会は強い権力を持っています。それに東京医師会が出てきた場合には、表立って騒ぎ立てる可能性もあります」
「そうなったら日本政府が潰すだろう? そのくらいは、お前も分かっているはずだが?」
「呪いという件を出さずに公的権力の私物化という事で攻めてくる可能性が非常に高いかと」
「なるほど……」
つまり、国民に開示できる内容だけで、こちらを批難してくるということか。
まったく、異世界でもそうだったら、下手に権力を持つと足を引っ張るのは異世界でも、こちらの世界でも変わらないと。
「――なら言っておけ」
「何と?」
「俺の敵に回るのなら、お前らを病院ごと、この世界から消し飛ばすと」
「流石に、それは……」
「あと、俺は後々、面倒事になるのは嫌いだから、一族郎党全員殺すとも通達しておけばいい。それでも俺の敵になるのなら、好きにしろと――」
「……分かりました」
神谷が溜息交じりに頷く。
「あと、こちらが今回の『コトリバコ事件』に関する出費になります。それと神社庁の東雲氏の方から、一度、来て欲しいと連絡がありました」
「東雲の方から?」
「はい。峯山純也という人物に関して相談したい事があるとのことです」
「そうか。分かった」
「それと――」
「まだ、あるのか?」
「もう学校は始まっていると思うのですが――」
「そうなんだよな……。それで、相談があるんだが……」
「意味が分かりました。勉強の件ですね?」
俺は頷く。
そろそろ中間テストがあるが、安倍珠江が俺の勉強を見てくれるという事で、今までは気にしていなかったが、それが全ておじゃんになったことで、大変なピンチに陥っている。
「たしか安倍珠江氏に中間考査に関しての教わる予定だったのですよね?」
「ああ。――で!」
「桂木警視監の学力は、壊滅的だということは、小テストの点数を見る限り、分かっています。おそらく少しの勉強だけでは、勉強しても無駄かと」
「バッサリと切り捨ててくるな……」
「警察組織としても桂木警視監には、大学は卒業を希望しておりますので、手伝うことは上からも命令を受けていますが……、ここ一ヵ月の間に起きた事件の事務処理が多すぎて、手が回りません」
まるで、俺が原因と言わんばかりだ。
「事務処理については、私の方で何とかしておきますので、桂木警視監は、復学し、少しでも勉強を頑張ってください」
「分かった……」
仕方ない。
学校に行くとするか。
まだ時刻は、10時前だからな。
カバンを持ち、俺は学生服のまま千葉県警察本部を出たあと、タクシーに乗り、学校へと向かった。
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