第296話

 アディールや白亜と、会話したあと自宅に戻った俺達。

 リビングには妹と都が待っていて――、俺達へと視線を向けてきたあと――、


「えっと、どなたですか? お兄ちゃん?」


 妹の第一声が、それだった。

 

「こいつが白亜。――で、こっちがアディールだ」

「まったく容姿が代っているけど……?」


 戸惑った様子で、そう呟く都。


「二人とも、優斗が異世界で力を得たという事は知っているであろう? 妾は、優斗と契約したことで姿が変わったのだ」

「契約って何の話?」

「妾は、白狐なのだ。そして野良妖怪が、町中にいると神社庁や陰陽庁の連中に討伐される恐れがある。そのために、我が、ご主人様たる優斗と契約をしたということだ。いわば、神使みたいなものだの」

「神使って……。よく神社で入口に飾られている狛犬とか?」

「それである。胡桃殿は、博識であるな」

「そりゃ……オカルト系は良く見ているし……」


 妹の呟き。


「うん。常識だよね……、――でも、姿が代るものなの?」


 それに同意するかのように頷く都は――、


「でも、姿が変化するものなの?」


 ――と、問いかける。


「うむ。自身よりも遥かに強い存在と契約した場合には、自身の主の力の影響を強く受ける事になる。なので、妾は6尾の狐から10尾の狐たる天狐へと成長したのだ」


 自身ありげに答える白亜。

 

「天狐って、最上位なの?」

「うむ。3000年以上、生きて到達できるかどうかの極致であるな」

「すごい。九尾よりも上ってことなの?」

「そうであるな」

「あの……、優斗は、大丈夫なの?」


 心配そうな声で都が問うてくる。


「先ほども言ったであろう? 契約した主の力に引き摺られると――、御主人様の力は、妾を軽く凌駕しておる。なので、何の問題もない」

「あれ? 天狐って、神格化した狐では?」


 妹が首を傾げながら、そんなことを呟くが――。


「うむ。神通力は、まだ上手くは扱うことはできないが、体内に巡っていることは理解している。それに妖力においては、おそらく最上位だから天狐と同格を持っていると自負しておる」

「つまり自称?」

「そう言われても困るがの」

「それで、アディールさんの髪色も金髪から銀色になっているのも、お兄ちゃんの影響を受けたの? ――でも、アディールさんは人間だから神使には慣れないよね?」


 さらに妹はツッコミをしてくるが――、


「私は人間。だから、間接的にユートとは繋がった」


 その言い方が要らぬ誤解を誘うことになるから止めて欲しいんだが……。


「繋がった!?」

「優斗!? ロリコンだったの!?」

「都さん、落ち着いてください! お兄ちゃんがロリコンなら、私に手を出していないはずはありません!」

「二人共落ち着け。こいつは、まだ日本語が不自由だからな。間に受けるな」

「お兄ちゃん……」

「優斗……」

 

 疑惑の眼差しを向けてくる二人。

 その瞳は、まったく俺を信じていない。


「おいおい。俺が、小さな女に興味がある訳がないだろ」

「――でもお兄ちゃん、都さんに手を出してないよね?」

「胡桃ちゃんにも手を出してないよね?」

「「なんなら、綾子さんにも手を出していなかったよね!」」

「お前たちの中では、俺は何て見られているのか非常に聞きたくない内容だが、この際、言っておくが、俺は女には興味はない」

「「――え?」」


 二人が氷つく。

 それどころか、白亜とアディールまで驚愕な表情を浮かべている。


「…………そう。優斗って、女の子に前から興味がないって思っていたけど……、そう言う事だったのね……。私、見てみないフリしていた事に今更、気が付いたわ」

「何の話をしているんだ」

「ご主人様……」

「ユート」

「お兄ちゃん……、純也さんのことが……」

「どうして、そこで純也の名前が出てくるんだ! それに、どうして白亜もアディールも溜息をついているんだ!」




 

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