第292話
「そいつは……おめでとう?」
「ご主人様、ありがとうございます。――ですが、強い力は、別の強い力を引き付ける事もありますので……」
その言葉に、そういえば伊邪那美も同じことを言っていたなと思い出す。
「つまり、色々と問題に巻き込まれる事になると言う事か?」
「ただ、ご主人様の周りにいる限り、これだけの力を得ても大した差はないかと――」
「それは僥倖と言っていいのか?」
「僥倖というよりも、誤差の範囲かと――」
「なら、何の問題もないな。それにしても髪の色まで変わるとは……、契約を結ぶと変わるんだな。名前が白亜だったから、髪の色から尾の色まで白く変化したから、名前のままになったな」
「はい」
コクリと頷く白亜。
「とにかく、これで都の護衛は任せられるな?」
「もちろんです。先日の魔族が襲ってきたとしても少しの間でしたら拮抗できるかと」
「――なら契約した甲斐があったというものだな」
それにしても、初めて他の生きものと契約したが、白亜の風貌が金から白銀に代わったのは、おそらくだが、俺の力の根源と関わっているかも知れないな。
本来の俺の姿は、修練と老齢により白銀の髪を有していたし。
「ご主人様」
「どうした? 白亜」
「ご主人様と霊的なパスを繋いだ時に気が付いたのですが――、御主人様は、すでに神殺しをしているのではありませんか? 相当、強い呪いを受けていると感じたのですが――」
「まぁ、そうだな」
俺は、アディールを抱いたままの白亜へ視線を向けたまま、屋上に座る。
「それが、どうかしたのか?」
「――いえ。神々の呪いを受けているにも関わらず、妾には呪いは一切、降りかかってこず――、力だけが供給された事に違和感を覚えて――」
「まぁ、神様ってのも無関係の第三者を呪うほど暇じゃないってことだろ」
肩を竦めながら答える。
まぁ、そんなのは詭弁だというのは理解している。
「そう……なのですか……」
そして、俺の言葉が嘘だということを、白亜も理解したようで目を伏せて返事してくる。
俺に呪いが全て降りかかっているのは、俺の契約内容が、そうなっているからに過ぎないと、思っている。
ただし、すでにどういう契約をリオネデイラと交わしたのか――、それすら覚えてはいない。
「まぁ、細かいことは気にするな」
しばらくしてから、アディールが目を覚ます。
白亜は、アディールが目を覚ましたところで、コンクリートの上に座らせて距離を取る。
「師匠。申し訳ありません」
第一声が謝罪の言葉。
「私は、自身の力量を理解しておらず、無理な願いを――」
「気にするな。俺の修行方法は、少しスパルタだったからな。まぁ無理をする必要はないと思う。それと、お前を案じて介抱していた白亜に礼を言うんだな」
「はい……」
頷くアディールは白亜の方を見るが――、
「え? 妖力が……、師匠! こ、これは――。――い、一体!?」
「どうかしたのか? 多少、姿は代ったと思うが……」
「多少どころでは――。この妖力……、銀、白狐……、ううん。天狐か空狐の領域に足を踏み入れて――。これだけの力を、どうやったのですか? 師匠!」
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