第261話
俺が見ている前で戦い始める二人。
身体強化をしたアディールが間合いを詰めたかと思うと、徒手空拳で白亜を攻め立てていく。
「――くっ」
「中々に鍛えられてはいるようであるが、所詮は小娘であるな」
アディールが放った拳を、白亜が何の表情も見せずに素手で受け止める。
「所詮は――」
そこまで白亜が言いかけたところで、空から雷が落ちてくる。
甲高い音と共に、白亜の体は吹き飛ばされ地面の上を転がっていく。
「神薙を甘く見てほしくない。私は雷神であるカンナカムイと契約している」
「ほう……。面白い。足りない力は、他所から持ってくるとは――」
「――ありえない。神雷を受けて立ち上がれるなんて……。それに……」
白亜は何事もなく立ち上がると赤い瞳を大きく見開くと、所々、黒焦げとなった裾を破く。
すると、彼女の真っ白な細い足が露わになるが――、
「まさか……、結界に細工を加えている?」
「気が付くのが遅いのう!」
頭上に白亜が手を上げると同時に、青く燃える炎が彼女の上空に作り出されていく。
「狐火!?」
「知っておるなら話は早い。小娘! 妾の狐火は、ちいとばっかし熱いぞ?」
腕を振り下ろす白亜。
それが命令とばかりに、100近い直径30センチほどの炎が、アディールに殺到する。
だが、アディールは避けもせずに両手で印を結んでいくと地面に手をつけ――、彼女の前に巨大な水柱が発生する。
水柱は、炎を次々と呑み込み無効化していく。
「それも神の力か?」
「そう。ホヤウカムイの力――、お前の力は効かない。そして――、これがレラカムイの力」
さらに印を結び、白亜へと向けて両手を前に突き出すようにして聞き慣れない言葉を口にするアディール。
それに伴い、アディールと白亜の間に存在するあらゆるモノが切断されていく。
「真空の刃か」
認識不可な攻撃――、それが白亜を襲うが、彼女はニヤリと笑みを浮かべると懐から扇子を取り出し前方へと振るう。
小さな小型の竜巻が発生し、白亜へと肉薄していた真空の刃を受け止め吸収していく。
「――なっ!」
「狐は、本来は火と風を得意とする。その妾に、風で攻撃を仕掛けてくるとは――、些か勉強不足ではないのか? 小娘」
白亜は、さらに発生された小さな竜巻を巨大化させ、アディールへと向ける。
周囲の廃屋の建物を次々と粉砕していき巨大な竜巻へと変わった破壊の渦がアディールを呑み込んでいく。
「おい! やりすぎだ!」
「ご主人様。あれ相手に、この程度の攻撃は問題ない。それに加減はしたのだ」
竜巻は、すぐに消え去り、その場にはアディールの姿が――。
アディールは、周囲に札を展開していて、それが防御の役目をしていたのか、無事ではあるようだ。
だが、すでに次の攻撃に移ろうとしているようで、手には拳銃を構えていて――。
「銀の弾丸! 受けろ!」
アディールが両手で構えていた拳銃の引き金を引く。
それに伴って、雷を纏った銀色の弾丸が、白亜へと向かっていくが――、その銀の弾丸は、白亜の白い尾で受け止められる。
「――なっ!」
「今の攻撃、悪くはなかったぞ。だが、妾を倒すには、まだまだ実力不足は否めないのう」
「そんな……」
アディールは、力尽きたのか膝から崩れ落ちる。
「ユート、ごめん」
「やれやれ」
アディールが、溜息交じりに肩を竦めたところで――、俺の方を見てくる。
どう見ても勝敗は決したようだな。
それにしても――、
「神薙か……」
候補だと聞いていたが、思ったよりも実力はある。
冒険者ランクで言えばBランクとAランクの間と言ったところか。
「――さて、どうしたもの……」
「トミカムイ!」
白亜の独白と共に、アディールが叫ぶ。
それと同時に、白亜の右腕が鋭利な刃物で切断され空中へと舞い上がる。
「油断した。お前――」
「なるほど……。演技であったか」
5メートルを超える鋭利な刃物は空中に霧散し、空中を舞っていた白亜の腕は地面の上に落ちる。
「妖怪は全部殺す」
印を結んでいくアディール。
「なるほど。これは――」
「アペカムイ! やつを焼き殺せ!」
空中から生み出された巨大な――、3メートルを超える大炎が、白亜に向けて放たれる。
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