第258話
「そうか……。何れ、こうなる事は予想はついておったが――。それで、お主たちが派遣されてきたという事か?」
「――いや。コトリバコが暴走している件について調査をしている」
「そうか」
息を整え終わったのか立ち上がる白狐は、溜息交じりに、そう呟きながら俺を見上げてくる。
「それにしても、だからこそ最初は警告のような態度だったということか」
「力を見せて撤退させる予定であった。強い霊力を感じ取ったからの」
「それでは見ていくか?」
「コトリバコに関してか?」
「うむ。早めの方がいいであろう?」
「それは、そうなんだがな……。同行している奴が、無断で動くと手伝ってくれ無さそうだからな」
「それでは、日が昇った時に村に降りてくるとよい」
「そうさせてもらおう」
話が終わったところで、俺は「ふと」気が付き――、安堵した様子の白狐――、白亜の方へと振り向く。
「――な、なんじゃ?」
戸惑いの様子を見せた白亜に詰め寄り、岸壁に向けて掌底を放つ。
ドスン! と、鈍い音と共に俺の掌底が岸壁にヒビを入れる。
もちろん、岸壁と俺の間には白亜が挟まれる形となっている。
「話は理解したが、裏切ったら体で払ってもらう事になるからな? 分かったな?」
「……か、からだで……」
「分かったな? 酷いことをするからな」
「ひ、ひどいこと!?」
白磁器のような白い頬どころか顔全体を真っ赤にしているところからすると、約束を反故にすると俺が少しでも思っていることに苛立ちを覚えているようだな。
これなら、裏切ることはないか。
「とりあえずだ。俺の同行が起きてから村に向かうから、その時には敵対行動を取るのは止めてくれ。ただし、俺とお前の関係については追及されるとメンドクサイから、初めて会ったような態度をとってくれ。わかったな?」
俺の言葉に、顔を真っ赤にしたコクリと頷く白狐。
「それじゃ話は、ここまでだ」
「待ってほしい」
「何だ?」
「な、名前を――」
「――ん? 言っていなかった? 桂木優斗だ」
「かつらぎ……ゆうと……。お主は、お主は、それだけの力をどうやって手に入れたのだ! 神の力では無い事は分かるが――」
「答えるつもりはないな。あと、俺の同行者には、俺に関しては余計な事は言うなよ? お前と俺の間だけの話だ、いいな?」
「わ、分かっておる!」
「そうか。それなら問題ない」
「の、のう! 桂木優斗とやら!」
「何だ? まだ話があるのか?」
「――そ、そうではなく……、お主は……ただの人間ではないのだろう?」
「いや、どこからどう見ても一般的な男子高校生だが?」
いやいやと言わんばかりに、腕を振るって否定してくる白狐。
「お主が一般的であったのなら、この世界は酷いことになると思うのだが?」
「酷い言われようだな」
「褒めておる。それより、お主――、妾と……一緒になるつもりはないかの?」
「一緒に? それは、俺の下僕になると言う事か?」
「…………まぁ、広く言えば、そんな感じかの?」
「残念ながら、俺は下僕を作るような趣味はない。作るなら対等な関係だな」
「た、対等……。それはつまり……」
何だ? 何でもじもじとしているのか。
「知っているか? 妖怪の世界では強いモノに従うというルールがあることに。そして自然界では強い雄は雌に好まれるということに」
「まぁ、自然界では当たり前だな」
「うむ。分かっているのならよい。妾と対等な契約をしてくれるのなら、お主の願いごとを聞いてやってもよい! そうでなければ、お主のことを同行者の霊能力者の小娘に話してしまうかも知れない」
「おい――」
「口が、滑ってしまう事もあるかもしれない……」
「まったく――」
つまりアレか? 強いモノに従うというのは本当だから、俺が主人になれば言う事はキチンと聞くって召喚獣と召喚術者の契約みたいなモノか?
異世界では、冒険者ギルドに召喚術者が居て自慢していたのを何度も聞いたことがあるが、実際、目の前で提示されると感慨深いものがあるな。
「分かった。とりあえず契約はしよう。だが――、俺のことは、絶対に話すなよ? いいな? 絶対だぞ?」
「分かっておる! どんと桂木優斗の妾に任せるのだ!」
何だか、押し売りみたいな事をしてきた感じがするが、妖怪でも契約すれば召喚獣扱いでいいのか?
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