第248話
「すごい顔をしているわよ? もしかして、仲が悪い相手とか?」
「そう……だな……」
「コイツ危険――、だよね? ユート」
「分かるのか?」
「分かる。人間じゃない。……でも、私じゃ勝てない……と、言うか……」
チラリと俺の方を見てくるアディール。
「コイツ強すぎる。写真からも分かる。たぶん、普通じゃ勝てない」
「そんなに不味いの?」
紅幸子の問いかけに、アディールは無言で頷く。
それにしても、写真から分かるくらいにヤバイというのが、アディールには分かるってことか。
しかし……、いまの俺の力で勝てるかどうか……。
接敵したら本来の力の1%も出せない俺では、かなり厳しい相手だ。
それでも戦うことを考慮に入れるとなると、それなりの装備が必要になる。
せめて神刀クラスの武器があれば違うんだが……。
「何とかやりすごして、事件を解決するしかないな」
「ユートでも勝てるか分からない?」
アディールが問いかけてくるが――、
「五分五分ってところだな。せめて、まともな武器があれば違うんだが……」
「どんな武器が必要?」
「聖水か、聖剣――、アンデット特攻の武器があれば、かなり違うな」
「アンデット……。ユートは、何で、そんなに詳しい?」
「まぁ、色々あってな」
正直、イシスが絡んできているとなると、相当ヤバイ案件になる。
純也が同行していなかった事は、不幸中の幸いと言えるだろう。
「色々って?」
「企業秘密だ」
「桂木君。もしかして……、また神絡みなの?」
「そっちの方が楽まである」
「ええーっ。それって、かなり不味いわよね?」
「マズイというか……」
正直、魔王軍四天王イシスが全盛期の力を有していた場合、阿倍珠江が起した災害なんて足元にも及ばない程の大災害が起きかねない。
――というか、コソコソと動いている方が不可解でならない。
何故なら、魔王軍四天王でも最強に近い死霊王イシスなら一体で、この世界の一国の軍隊を相手に出来る程の力を有しているからだ。
「とにかく、相手にするのは面倒な奴だな」
「聖剣か聖水があれば、何とか出来る?」
「何とかというか、そんなモノがあるのか?」
「ある」
コクリと頷いたアディールが電話をかけた後、二言三言話したあとに電話を俺に差し出してくる。
「東雲です。アディールより報告を受けましたが、桂木君の力でも対抗するのが難しい相手だとか?」
「そうだな」
「分かりました。それで、聖剣か神剣が必要と言う事で伺いましたが、そこからですと一番近い場所だと……福島に向かう途中に、日光東照宮に奉納されている祢々切丸(ねねきりまる)があります。それを使ってください」
「使ってくださいって……、どんな性能があるんだ?」
「日光山中に棲んでいた化け物を独り手に倒したという逸話があります」
「逸話かー」
そういうのは求めてないんだよな……。
「あと、多少の神気を帯びていますので、邪を払うにも有効かと思います」
「そうか……」
「そこからですと、それ以外には幾つか神社庁から働きかけて借りられる神刀はありますが、どれも同程度のモノですので……」
「草薙の剣とかは難しいのか?」
「さすがに天皇家が所有している祭具は、すぐに借り受けることは難しいです。それに熱海神宮は正反対になりますので――」
「皇居には無いのか?」
「あれは、天叢雲剣のレプリカである草薙の剣ですので、神気を纏っていません。ただの普通の鉄の塊です」
「……そうなのか」
「はい」
それだと、日光東照宮に奉納されている神剣を借りるのが理に叶っているな。
「分かった。すぐに手配をしてくれ」
「それでは神社庁の方から、連絡を入れておきます」
「幸子」
「分かっているわ。まずは日光にいくのね」
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