第249話

「ああ。頼む」

「オーケー」

「それよりも――、幸子」

「何?」

「良いのか? かなり危険なドライブになると思うが? 命の保証は出来ないぞ?」

「そうね……。ただ、あの人の頼みなら手伝わない訳にはいかないし、私が適任というのもあるし……」

「あの人?」

「その子。神社庁の子よね? 桂木君のよく知っている人だけど、それをこの場で言うのはマズイわよね?」

「あー。なるほど……」


 つまり伊邪那美からの頼みってことか。

 そして、伊邪那美と何らかの交渉をしていて、今回の俺の手伝いをしてくれると――。

 それにしても伊邪那美の奴、随分と俺に肩入れしてくれるものだな。

 何か裏があるとしか思えないほどに。


「それよりも、このコトリバコのある場所だけど……。場所は、福島とは名ばかりの何も無い場所なのよね」

「そうなのか? 村があると書かれているが?」


 スマートフォンの画面には、場所は磐梯朝日国立公園近くの牛ヶ岩山から5キロの場所だと書かれているが……。


「村なんて無いわよ。ただの畦道と神社と一軒家があるだけ言った方がいいわね」


 車が6号線から常磐自動車道へと――、高速道路へと乗り変わる。

 

「まぁ、有名な場所ではあるけれどね」

「有名?」

「ええ。桂木君は、『こぶ山の白狐』って民話は聞いたことがあるかしら?」

「――いや、知らないな」

「そう。簡単に説明すると、こぶ山って峠にね、昔、白狐という妖怪が住んでいたの。その妖怪が悪さをしていたから旅の僧侶が倒したって話。その場所が、コトリバコがある場所」

「なるほどな」

「二人とも村ならある。結界が張ってあるから、霊力を持たない一般人には見えないだけだからっ」

「そうなのか?」

「そう。コトリバコのオリジナルは危険。神社庁では、そんな危険なモノを一人や二人に管理はさせない。それと観光客が見たのはコトリバコのレプリカ。本物なんて見ることはできない。この写真のコトリバコも全てレプリカ。縁を見れば看過できる」

「すごいわね。その子」


 紅が感心したように呟く。


「そうだな。写真からだけでも読み取れるのは――」

「ユートが、おかしいだけ。神様から力を渡されているのに、霊能力者が出来ることが何一つ出来てない。まるで神様から力を与えられていない一般人にしか見えない。霊力も全然ないようにしか見えない。どうして姫巫女様が、ユートを気にかけているのか理解できない」

「酷い言われようだな」

「でも、桂木君は、実際酷いからね」

「おい。以前のことをまだ根に持っているのか?」

「当たり前よ! あれ痛かったんだからねっ!」


 ただの身体強化だけで、体中の骨が逝っただけだと言うのに――。


「一応、治してやったろ」

「それまでの痛みが大変だったのだけれど?」

「……まぁ、約束は守ってくれたから、深くは追及しないけどね」

「いや、普通に蒸し返してきておいて何を言っているのか」

「はわわわわ。痛かった……? ま、まさか……」

「おい。アディール。コイツとは男女の関係はないからな」


 とりあえず誤解が生まれる前に忠告しておく。

 

「それにしても、場所はと――」


 4番目に作られたというコトリバコの場所を検索するが――。


「本当に何もない場所だな……。道があるのか? ここ」








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