第247話

「随分な言いようね。山崎君から頼まれて手伝いに来てあげたのに」

「もしかして協力者ってのは、お前なのか?」

「ええ。そうよ」

「もう、お前の用事は済んだんじゃないのか?」

「まぁ、こっちにも色々とあるのよ」

「そうか……」

「それよりも、今回もずいぶんとヤバイ事件に首を突っ込んでいるみたいね」


 そう俺と会話しながらも、紅は周りを見渡すと――、


「とりあえず車に乗って。こんな所で会話をする内容じゃないでしょ?」

「そうだな」

「いいのか? 一般人を巻き込んでも?」

「まぁ、俺の知りあいでもあるからな。問題ないだろ」


 俺の答えに渋々と言った様子で、俺と一緒に車に乗り込むアディール。

 

「それじゃ、移動しながら話をしましょうか」


 そう言いながら、エンジンを動かし車の運転をする紅は、俺の方をルームミラーで確認してくると――、


「それにしても桂木優斗君が、ロリコンだとは思わなかったわね」

「おい、その発言は撤回してもらおうか」

「あらま」

「それにしても、山崎と知り合いだったのか?」

「ええ。この業界は広いようでいて狭いもの。彼とは、昔から色々と情報交換をし合っている中よ」

「なるほどな……」


 警視庁にコネがある私立探偵と、オカルト雑誌のライターか。

 以前にも、超常現象を調べていた事も鑑みると、オカルト雑誌関係者に知り合いがいてもおかしくはないか。


「――でも、まさか神社庁と組んでいるとは思っても見なかったわ。貴方、一応、警察庁の人間よね?」

「どこで、その情報を……」

「そのくらいの情報なら警視庁にコネがあるなら、普通に流れてくるわ。とくに、貴方のことは警視庁内でも幹部の間では有名だもの」

「そうかよ」

「だから、貴方が神社庁と組んでいるのを、さっき見かけた時は驚いたわ。仲悪いのは昔からだから」

「縄張り争いってやつか?」

「そうね」


 それにしても、俺が神社庁と組んでいるのを見て知っていたのなら、ロリコン疑惑発言は非常に迷惑だから止めて欲しいものだ。


「紅」

「幸子でいいわよ」

「――なら、幸子。今回、コトリバコに関しては、どのくらいまで、情報を掴んでいる?」

「そうね」


 赤信号で車が停まったところで、封筒を差し出してくる。

 その封筒から出てきたのは13枚の写真。


「最初の9枚は、コトリバコの保管場所の写真よ。それと4枚は、最近、撮られた写真になるわ」

「最近?」

「ええ。コトリバコを保管して管理していた寺や神社近くで観光客が撮った画像に偶然映った人影ね」


 紅と会話しながら、俺は写真を見ていくが、9枚は確かに神社や寺の写真であったが、残り4枚には、褐色の肌の女が映っていた。


「――こ、こいつは!?」

「――え? 知り合いなの?」


 紅の問いかけに、俺は無言になる。


「ああ。確かに知り合いだが……」


 写真に写っていた女。

 それは、俺が確実に殺したはずの魔族――、魔王四天王の一人、死霊王イシスであった。


 

 

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