第245話
「チェンジって何でなのだーっ!」
「桂木殿。それは流石に無理です。一応、ああ見えてもアディールさんは、神薙の候補としては問題のない実力を有しています。それに何より、彼女は戦場を知っています」
「戦場ね……」
「はい」
俺の疑問にノータイムで答えてくる住良木。
その様子から嘘は言っていないのだろう。
ただ――、それよりも……。
「分かった。俺の名前は、桂木優斗だ。優斗と呼んでくれ」
「ユート?」
「優斗だ」
「分かったのだ! それにしても、主は、随分と切り替えが早いなっ!」
「切り替え?」
「うむっ。私のことを、子ども扱いしていたと思ったら――」
「いや、子供だろ。肉体年齢的に」
「きーっ!」
ポコポコとお腹を殴ってくるアディールから距離を取りつつ、俺は携帯を取り出す。
「桂木さんですか? 派遣した神薙候補は、到着しましたか?」
「ああ。到着した。それよりも、お前達は、どういうつもりだ?」
「どういうつもりとは? もしかして成人していない子供を戦場に送り出すなとでも言うつもりですか? そういう博愛主義を、桂木さんが御持ちとは、少し予想外でした」
「――ちっ」
思わず舌打ちする。
「桂木さんでしたら、利用できるモノは利用する。そういう方だと認識しております」
「だろうな。それより詳しいプロフィールを送ってくれ。何が出来るのか確認したい。それと調査場所も一緒に頼む」
「了解しました」
携帯電話を切ると、すぐにメールが着信する。
「なるほど……」
俺は携帯をチェックしたあと、妹の頭を撫でる。
「住良木。妹をよろしく頼む」
「分かりました。それでは、お気をつけて――」
病室から出たあと、病院入口から外へと出たあとタクシーを拾い千葉駅へと向かう。
「のう」
「何だ? アディール」
「お主は、私のことを随分と素直に受け入れたようだが、もっと――こう、何か言うモノかと思ったぞ」
「そうか?」
タクシーの後部座席に二人して乗りながら、俺は携帯電話を弄る。
「俺だ。山崎」
「今日は、どうかしたんですか?」
「実は、足が欲しい」
「足ですか?」
「ああ」
「もしかして――、コトリバコの事件を調べていますか?」
「その話、どこから?」
「ちょっと知り合いの情報筋からですよ。いま日本全国で発生しているらしいですね。ただ、いま原稿が締め切り間近なので手伝うことはできないんですよ」
「それは残念だ」
「ただ――、知り合いに頼みましょうか? 今回の事件には打ってつけの人物ですよ」
「打ってつけ?」
「はい。話しは通しておきますので千葉駅西口近くの喫茶店でどうですか?」
「分かった」
電話を切る。
「ユート」
「どうかしたのか?」
「民間人を、今回の事件に関わらせるのは、かなりマズイと思うのだ」
「そうだな……」
まぁ、元・外国人部隊に所属していた人間が一般人か? と、言えば違うと俺は即答するがな。
そして、そんな人間と付き合いがあって、今回のコトリバコ事件に関して関わっても問題ないと山崎が考える人間が、普通だとは思ってもいない。
俺はタクシーの運転手に、千葉駅西口へ向かうようにと話をつけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます