第244話
「アディール? 日本人ではないのか?」
「日本人と、イギリス人の間に生まれたと公的資料では記載があります。それが何か?」
「――いや、神社と言えば過去の仕来りを重視して日本人だけを徴用すると思っていたからな」
「職員の殆どは日本人ですが、霊能力者に限っては素養を持つ者は限られてくるため、その限りではありません。実際には、神薙の中には日本国籍を取得した者が3名居りますので」
「なるほど……。だが、日本国籍を有する者なのか?」
「それは、当たり前です。あくまでも神社庁は税金も投入されていますから」
「あー、公務員だもんな」
「はい。それでは、アディール・エリカ・スフォルツェンドですが――」
「その前に東雲」
「はい。何でしょうか?」
「派遣されてくる霊能者だが、戦場に立てない奴じゃないだろうな?」
「それは問題ありません。実際、戦場を経験した者です」
「それなら文句はない」
「それでは、桂木さん。エリカを宜しくお願いします」
「ああ。任せてくれ」
電話を切る。
「桂木殿。――ま、まさか……・」
「どうかしたか? 住良木」
「どうも何も――」
――コンコン
東雲と会話をしていたところ、住良木が驚いたような様子で口を開くと同時に、病室のドアがノックされた。
「どうやら来たようだな」
病室の入り口に向かい、ドアを開ける。
「――ん? 誰も……」
目線の高さには、視界に映るモノはない。
「待たせたなっ!」
「――ん?」
視線を下に移動する。
すると、俺よりも明らかに身長が低い幼女が立っていた。
幼女の見た目は金髪碧眼で、髪は腰まであるほど長く――、金色に光る美しい髪には天使の輪が出来ていた。
思わず俺は無言のまま、住良木の方へと視線を向ける。
「住良木鏡花っ! 久しぶりだなっ!」
「……やっぱり貴女でしたか……、派遣されてきたのは――」
「ん? 知り合いなのか? 住良木」
「はい。彼女は――」
「自己紹介は、自分でするのだっ! お前が、桂木優斗だなっ! 私が、お前の補佐役として任命された、今回の同行者であり、サポート役の、アディール・エリカ・スフォルツェンドだっ!」
俺は額に手を当てる。
頭が痛くなってきた。
「住良木」
「はい」
「コイツが、本当に、神社庁から派遣されてきたアディール何とかで間違いないのか?」
「何とかではないっ! 私を馬鹿にするでないっ! こう見えても、今年で11歳になるのだぞっ!」
何やら御立腹気味のようだ。
「この、何処から見ても小学生にしか見えない、お子ちゃまが、神社庁から派遣されてきた奴だと?」
「はい」
「冗談とか、何かの比喩ではなく?」
「はい」
「まじかー」
あまりにもあまりな予想外の出来事に俺は溜息をつくが、そんな俺の態度が気にいらないのか、俺のお腹をポカポカと殴ってくる。
ただ、まったく痛く無い。
「チェンジで!」
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