第237話
「桂木殿。喧嘩でもされたのですか?」
病室に戻ったところで、俺に気が付いた住良木が話しかけてくる。
「特に問題ない。それよりも都を実家に帰らせたが、何か急遽、帰らせる必要があったのか? 都は、呪いに掛かってはいないようだが――」
「だからこそです」
「だからこそ? どういう意味だ?」
「コトリバコと言う呪物は、一般の方にも認知されている代物なのです。つまり、それだけ名を知られるほど強力な呪物となります。霊視の力を持っているのでしたら、一目で分かると思いますが――。桂木胡桃さんが罹った呪いは、人に伝播するものです。それは成人男性以外――、確実に――、100%の確立で感染するほどに危険な代物です」
「確実に感染する?」
「はい。ですが――、神楽坂都さんは、呪いを全て反射していました」
「反射?」
俺の言葉に「はい」と、コクリと頷く住良木。
「反射か……」
「何か思い当たる節でも?」
「――いや」
異世界で、反射系の魔法と言えばカウンターマジックだが……、それは都が聖女として召喚された時に使えるようになったものであって、異世界に召喚されていない都が行使できるモノではないはずだ。
「だが、反射しているのなら問題はないんじゃないのか?」
頭を振るう住良木は口を開く――、
「桂木胡桃さんが、本来、他者へと感染させるはず呪いが、都さんが反射することで、桂木胡桃さんが体内に取り込む形になっているのです。そのために、呪いが返し状態になっていて――」
「つまり都が居るだけで呪いが深刻化しているってことか?」
「はい」
「つまり……」
妹に近づく。
「待ってください。今、治療をしても、この病棟には他に3名の呪いに罹っている方がいます。その方々も、同時に治療しなければ――」
「つまり、呪いに罹っている3人を、妹が呪いを受けない範囲外まで移動させてから治療すればいいという事か……」
「桂木殿……」
「どうかしたのか?」
「その3名は、治療はされないのですか? それに移動すると言っても、移動中に他の方に病が――」
「そう……だな……」
他人が、どうなろうと――、いくらでも死のうと俺の知った事ではない。
――だが、妹自身が他人に病を感染させたと知ったら、傷つくだろう。
「住良木。病の感染範囲は分かるのか?」
「正直、胡桃さんの病が発生した際に、こちらの離れの病棟に移動してくれたこと――、その手腕に、この病院の院長や医者の手腕に感謝する思いです。この病棟全域が、現在、呪いが蔓延している領域で留まっていますが――、徐々に呪いの力が強くなっていますので、結界で封印することを考えています」
「封印?」
「はい。呪いが外に漏れないように――、拡大しないように、霊力で結界を作り、呪い自体を外には出さないようにします」
「つまり、妹は……」
「すぐに助けることはできません」
「……そうか」
「桂木殿。まずは、多くの方に呪いが感染することを防ぐことを考えることが最優先かと――」
「……なぁ、住良木」
「何でしょうか?」
「今回の事件は、神社庁や陰陽連――、もしくは国は関与してないよな?」
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