第232話

「そっかー」

「――ですが、桂木殿はありだと思います」

「あり? とは……?」

「桂木殿は、人の身に神の力を宿しているのですよね? それなら、強い霊能者が生まれるのは必然だと思いますので、神社庁の中の有力な女性霊能力者の中では、桂木殿はありという話が流れていると聞きます」

「そ、そっか……」


 俺は、そのようなモノに興味はない。

 そもそも俺の力は遺伝子で継承されるようなモノではないからな。

 

「はぁー。やっぱり疲れますね。神様の前に居ましたから……。桂木殿が神域を展開してくれてなかったら倒れて意識を失っていました」

「そうか」

「そういえば、桂木殿は、思い人などは居られるのですか?」

「今は、そんな話をする雰囲気か?」

「気分転換も兼ねてです。女は、恋愛についての話は好きですから。ただ、神様と契りを結ぶのはアウトですけどね」

「なるほどな。ちなみに恋愛に関して答える義務はないから、答えない」

「それは残念です」

「しかし神社庁も婚活相手を探すのが大変なんだな」

「はい」


 頷く住良木は――、


「そもそも神社庁で年収2000万円近くを貰う為には、霊視能力や霊を払う力は必須です。つまり能力が無ければ、そもそも神社庁で最前線に立つ事すらできないのです。そのため、力ある霊能者同士が婚姻を結ぶことは普通にありますし、生まれた時の霊力の強さで、1歳未満で許嫁が決まることは良くあります」

「そうか」

「なので、桂木殿のように神の力を得た神の御子は、高い競争率になる事があります。むしろ、一回幾らまであります」

「生々しいな。種馬かよ……」

「――ですが、それが現実ですので。国民を守るために神社庁は存続していますし、何より他者を守るためには能力の有無が左右しますから」

「まぁ、合理的ではあるよな。だが、俺には、その気は無いから残念だったな」

「分かっています」


 ぐいぐいと来る割には、あっさりと引く住良木。


「まぁ、分かっているなら俺から言う事はないな。それじゃ住良木、話は変わるが純也の方はどうだ?」

「峯山純也さんの事ですか?」


 俺は頷く。


「式神の使い方については陰陽連の方に教わる方向になりますが、それ以外の――、霊に対する知識や、神社仏閣と陰陽連との関わりなどの歴史については、まずは神社庁の方で説明しています。あとは霊力の強化ですが、役小角や安倍晴明が使役した式神に選ばれただけあって、この数日、鍛えただけで霊力の上昇値は目を見張るモノがありました」

「ほう……」

「すでに霊視を身に着けており、霊力値は、鍛える前は私の3割程度でしたが、今では私の4倍ほどあります。正直、信じられない気持ちで、驚きの連続ですが、鬼気迫る様子で、取り組んでいますので、その結果かと思います」

「なるほどな」


 元々、純也は異世界に勇者として召喚される予定だったから潜在能力は高いのかも知れないな。



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