第180話

「つまり、俺の身内に手を出すということか?」


 俺は、内閣官房長官へと視線を向けながら呟く。


「当たり前だ!」

「そうか。つまり、俺の敵という判断でいいんだな?」

「何?」


 俺は瞬時に肉体強化をすると同時に、内閣官房長官の首を掴むと同時に会議室の壁に叩きつける。


「グハッ!」


 多少手加減したとはいえ、コンクリートの壁に叩きつけたのだから、内臓を損傷したのか、血反吐を吐く官房長官。


「お、おまえ……」

「聞いただろう? お前は、俺の『敵』かどうかと――」

「や、やめ――」


 次の瞬間、官房長官の首を俺の手刀が刈り取る。

 空中を舞う頭。

 それを見て、何が起きたのか理解できない周囲の状況。

 そして――。


「どうだ? 一回、死んだ感想は?」


 俺は落ちてきた首を掴むと瞬時に、内閣官房長官の頭と胴体を繋ぐ。

 そして、掴んでいた首から手を離すと、床に膝から崩れ落ちる男。


「か、カハッ――」


 俺の問いかけに答える事もなく何度も息を吸う男。

 時貞は、何度も自身の首を触り現状を把握したところで――、俺を見あげてくるが、その瞳には恐怖の色が刻みつけられている。


「わ、わたしは……、いま……」

「ああ、とりあえず殺してみたが、臨死体験した気持ちはどうだ? 中々、おつなモノだったろう? 世界がスローペースで見えただろう? どうだった? 走馬灯を見た感想は」


 俺は、時貞の首を掴み持ち上げる。


「もう一回、逝っておくか?」


 手刀を作り、時貞の首を撥ねようと殺気を込めて問いかける。


「た、たすけ――」

「駄目だな」


 もう一度、時貞の首を撥ねてから、再度、繋げる。


「あああああああ……」

「二度目の臨死体験だ。さて――、俺は、こう見えても交渉事は得意でな。よく尋問などの依頼も受けていたんだが――、お前は、何度、死ねば、俺の言葉に理解を示してくれるんだ? もう一度、聞くぞ? お前は、俺の身内に手を出すのか?」

「そ、それは――」


 今度は、腕を手刀で切り飛ばす。

 だが――、今度は肉体を修復しない。


「イエスかノーで答えろ。学校で習わなかったのか? 問いかけには正しく答えろと」

「桂木殿……」

「黙っていろ、住良木」


 俺は、殺気を込めた一言で、住良木を黙らせる。


「で? 俺の身内に手を出すのか? 時貞」

「わ、わかった。手は出さな――」


 時貞の首が空中を舞う。

 また時貞の体を修復する。


「俺に嘘は通じない」


 生体電流を探れば嘘がどうかは見分けがつくからな。


「わ、わかった」

「分かりましただろ?」

「わ、分かりました」

「よし。――なら、120兆円用意しろよ? それで手を打ってやる」

「総理に確認を――」

「もう一回、逝っておくか?」

「ひ、ひいいい。わ、わかりました!」

「それと、一つ言っておくが、お前らがいる国会議事堂なんて、その気になれば一瞬で消し飛ばせるからな。どっちが人質を取っているのか、きちんと立場を理解した上で、交渉しろよ?」

「わかりました……」

「さて、交渉は上手くまとまったな」


 安堵した俺とは対称的に住良木が「上手くまとまったとは……一体……」と、突っ込みを入れてきていたが、異世界では良くある交渉方法の一つだ。







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