第153話

「色々と制限が掛っていて使い処が難しいですね。でも、良かったです。神様も案外、色々と考えているのですね」

「いや、そこまでは考えてないと思うぞ」


 少なくとも俺が殺した神々は、自己中の塊だったからな。

 知り合いでまともなのは伊邪那美くらいか?


「とにかく、仕事を受け付けする形にして、引き受けるかどうかは事件の内容を精査した上でと言う事でどうでしょうか?」

「そうだな。それがいいな。――あ……」

「どうかしましたか?」

「得意分野があったことを思い出したんだが……」

「得意分野ですか?」

「ああ。俺、犯罪者の口を割らせるのは得意なんだよな」

「それは、自供させるのが得意と言う事でしょうか?」

「そうなる」

「ですが、犯罪者かどうかすら分からない状況で自供をとっても……」

「まぁ、任せておけ」

「そうですか……。ただ自供についての仕事依頼は来ないと思います」

「はい。逮捕だけでなく自供も査定に響きますので」

「なるほど……」

「それにしても桂木さんが自供を得意とするって……、まるで……、そういう仕事をした事があるような素振りですね」

「色々とあるからな」

「神様の力が?」

「そうだな。日本の神ってのは色々な分野が得意なんだろう? そんな感じだ」

「なんだか神様の力を得ているのに他人事ですね」


 まぁ、実際のところ、他人事だが――。


 それよりも、自供は俺が冒険者時代から得意とする分野の一つだったんだが、その経験が生かせないのは少しだけ勿体ないな。

だが――、昇進の査定に響くのなら仕方ない。


「それで話は、こんなものか?」

「はい。それで、これからですけど……、自宅までお送りしましょうか?」

「――いや、必要ない。ここからは、そんなに家まで遠くないからな」

「分かりました」


 話も終わり県警本部から出たころには、すでに日は暮れていた。


「何だかあれだな……。戻ってきてからというもの一日が早いな」


 県警本部敷地から出て自宅の方へと歩きだすと――、


「優斗君?」

「安倍先生?」


 偶然にも、目の前には知り合いの女性が――。

 胸を強調するような服を着ていて、目のやり場に困るが、これは生物的な反応だから仕方ないと自分に言い聞かせておく。


「もう! 珠江って呼んでって言ったのに!」

「珠江先生は、どうして、こんなところに?」

「――え? わ、私ね。この辺に住んでいるから……」

「なるほど」


 ハイエルフ顔負けの整った顔つきに、何より絶壁なハイエルフには存在しない、魅惑な大きな胸をしている安倍珠江。

 もはや、その美貌の破壊力は、周りからの視線を一身に受けていると言っても過言ではない。


「それにしても、優斗君。千葉県警本部から出て来なかった?」

「気のせいですよ」

「そうかな?」

「近道の為に、敷地内を通っただけなので」

「ふーん。もしかして悪い事したから捕まったりしたり?」

「それはない」

「そう。あ! 優斗君! もしよかったら、これから先生が色々な勉強を教えてあげようか?」

「さすがに、この時間からだと自宅に戻らないといけないので」

「それは残念ね。また明日、学校でね!」

「はい。その時は、宜しくお願いします」


 俺は返答しながら、安倍先生の横を通り過ぎ――、自宅へと向かう。

 

「優斗君、気を付けて帰るのよ!」


 どうやら、安倍先生は、教育実習生ということもあり、こんな時間から勉強を教えようとするあたり、かなり教育熱心なようだな。

 それにしても俺の自宅から近いところに住んでいるとか偶然というのは怖いものだ。




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