第151話
「雇用? すでに千葉県警で雇用する話だったのでは?」
俺は疑問を投げかける。
「そのつもりだったのよね……。あの時に、勝手に行動するまでは――」
「つまり、俺の雇用は無しと言う事ではないんだよな……。ということは、雇用形態が変わると言うことか?」
「そうなるわね。日本国政府は、治安維持のために警察組織全体で、貴方に仕事を依頼する事で方針を固めたの。ただ、それは大々的にではないの」
「それは、表立って警察では対処が出来ない仕事を俺に依頼するってことか?」
「話が早くて助かるわ」
「まぁ、よくあったことだからな」
俺は肩を竦める。
異世界でも良くあったことだ。
「良くあったことって……。貴方、16歳の男子高校生なのよね? 本当に16歳なの?」
「さあな」
俺は厳つい殺人でも犯したような男達の方へと視線を向ける。
「それよりも、これだけ人を集めてどういう了見なんだ? 雇用条件を変えるだけなら、こいつらは必要なくないか?」
俺の言葉遣いが気に入らないのかヤクザ顔負けの顔をしている逞しい体つきの男達が俺を睨んでくる。
「彼らは、各都道府県の県警の上層部よ。君を一目見たいって事で、今日、この場を用意したの」
「なるほど……」
たしかに――、クライアントがクエストを冒険者に直接依頼する際には、冒険者の実力や実績を重視するからな。
顔合わせみたいなモノなんだろう。
「それと桂木君」
「何だ?」
「君の立場なんだけど、日本国政府は、君だけの組織を作ることにしたの」
「どういう事だ?」
「日本国政府は、君の力を、一個大隊と同程度と決めたの」
「一個師団?」
「ええ。陸軍500人から600人ほどと見てくれればいいわ」
「ふむ……」
「不服そうね」
「――いや。別に構わない。――で、俺だけの組織を作ることにしたと?」
「そう言う事になるわね。表向きは、警察の下部組織という体裁をとる事になるけれど、正式名称は、日本国政府、内閣府直轄特殊遊撃隊という名称の組織になるわ」
「部隊ではないんだな」
「だって、貴方一人じゃない」
「そりゃ、そうだ」
「それに伴って、肩書だけど警視監の役職を用意する事になったわ」
「用意っていいのか? テストとか受けてないが?」
「必要ないわ。それだけ日本国政府は、貴方の力を評価しているってことだから」
「なるほどな……。ちなみに内閣府直轄特殊遊撃隊というのは、警察からの仕事依頼を受ける組織でいいのか? それと給料についてだが――」
「完全な出来高制だから……」
「あー」
つまり、国内で問題が起きた際に解決する為の権限は渡すが、報酬は出来高制ってことか……。
「だって……。貴方、すぐにモノ壊すから」
「ぐうの音も出ないな」
流石に、そこには反論できん。
「あとは、俺の部署というか組織だが、職場は?」
「それは、今後のことになるけど、県警本部の中に用意する事になっているわ」
「なるほど……。あと、俺の取り扱いが特殊ってことは極秘ってことだよな?」
「ええ。そうなるわね。アメリカで言うとCIAとか、ロシアで言うとKGBみたいに思ってくれるといいわ。それよりも、さらに特殊な扱いになるけど」
「何だか、一気に特別扱いされている気がしてくるな」
「実際、特別扱いだからね。それだけ、貴方の扱いについて日本国政府は神経質になっているのと同時に期待しているの」
「それは、俺の戦力に期待しているということか」
「そうなるわね」
「まぁ、良くあることだな。それと、一つ頼みたいことがあるんだが――」
「頼みたいこと?」
「ああ。俺も学校があるし、何より学生の身分だからな。さすがに一年中、県警本部に詰めているのは無理がある。出来れば、俺の仕事をサポートできる要員が一人は欲しい」
「分かったわ。それは神谷警視長さんでいいかしら?」
「宮原警視監!?」
「だって、仕方ないじゃないの。彼の力を目の前で見てきたのは貴方だけなのよ?」
「そ、それは、そうですが……」
「きちんと給料には反映させるから頑張ってね」
「……分かりました」
渋々と言った様子で神谷は肩を落として宮原からの命令に首肯した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます