第149話
一学期の中間考査が終わり、数日が経過し――、学校の教室では至るところから怨嗟の声が聞こえてきていた。
「優斗、どうだった?」
純也が、面白そうな顔をして俺に話しかけてくる。
そんな純也の顔を見て一発殴ってやってもいいのでは? と、思いつつ、俺は机に俯せになる。
「俺には、勉強の才能が無かったようだ」
正直、かなり勉強したが――、それでも数十年という異世界で生きてきたブランクは、根こそぎ中学時代の知識を洗い流していた。
だいたい、異世界で使う勉強なんてものは四則演算程度で、二次関数とか、そんなモノを使う場面は一切なかった。
円周率だって、そんなモノは使うことは無かったし歴史だって古典だって古文だって、極めつけは歴史とか英語なんて論外だ。
つまり白紙状態の俺が、どんなに頑張って勉強しようと、3年間分の勉強を頭に詰め込むことなんて論理的に不可能。
「こいつはひでえ」
俺が丸めた答案用紙を見ながら、笑っている純也。
「お前、言葉と態度が一致してない」
「いやいや、ははははっは! この点数ないだろ! お前、青狸の御主人かよ! はははははっ」
「くそが!」
せっかく都に勉強を教えてもらったというのに、俺のテストの点数は、7教科合わせて100点という奇跡的な数字を叩き出している。
ハッキリ言えば赤点という奴だ。
「優斗……」
悲しそうな瞳で俺を見てくる都。
「すまない。俺の力が及ばなかった」
「ううん。私……、馬鹿な優斗でも好きだから大丈夫だよ?」
「フォローになってねえええええ」
「まぁ、いいんじゃないか? 彼女の居ない秀才も居る訳だし――。それなら、優斗は勝ち組だろ」
俺の肩を何度も叩きながら純也がフォローを入れてくる? が、それはフォローになっているのかという疑問に突き当たる。
「空しいな……」
「まぁ、一学期の期末で挽回すればいいんじゃないか?」
「そ、そうだな……」
幸い、俺には銀髪の超絶美人なお姉さんが、家庭教師をしてくれることになっているからな。
きっと大丈夫だろう。
大丈夫だよな?
「そういえば、優斗。テストの答案用紙も全部返ってきたし、これからどうするの? やっぱり勉強する?」
「どうするか……。たしか一学期期末は6月末だよな」
「そうだね」
頷く都。
「それなら、今日くらいはパーッ! と、カラオケとか行かないか?」
純也が提案してくる。
「そういえば、前回は、気分転換にカラオケに行けなかったよな」
「そうそう。優斗が金木先生に生徒指導室に連れて行かれたものね」
「それを言われると何も言えないな」
都の鋭いツッコミに流石の俺も反論は出来ない。
「まぁ。今日くらいは、カラオケに行くとするか! なあ、優斗!」
「そうだな」
そこは、俺も同意だ。
勉強の前に気分転換も重要だからな。
方針も決まり、午後のホームルームが終わったところで、昇降口に向かう。
すると、ポケットの中の携帯電話が振動する。
「どうした? 優斗」
「いや、ちょっと電話だな」
着信した携帯電話は、千葉県警から支給された端末で、発信者は『宮原由美子』と表示されていた。
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