第147話
「金木先生。桂木君と今後の事について話をしたいのですが……」
「分かったわ、安倍さん。桂木君の勉強についてお願いね」
「お任せください。金木先生」
「それじゃ桂木君、シッカリと勉強がんばってね」
「はい……」
そこまで念押ししなくてもいいだろうに。
まぁ、学校側としては落第者を出す訳には行かないらしいから、仕方ないかも知れないが。
俺の返事に満足したのか金木先生は生徒指導室から出ていった。
「――さて、桂木君」
「何でしょうか?」
「君のことは理事長からお話を伺っているわ」
「あー」
山城理事長は、俺のことを良いように思っていないからな。
何しろ、自身の娘の警護を途中で放り出したと思われているし。
「そんなに悲観的な顔をしなくてもいいわよ? 問題児がいるとしか聞いてないから」
「それは悲観する所では?」
まったく俺のことを何て教員の間に話しているのか――、まあいいが……。
「そうね。桂木君は、もう少し周りに合わせて行動した方がいいかも知れないわ。ただ、それは勉強とは関係ないから、これ以上は言わないけどね」
「助かります」
「それじゃ、桂木君」
「何でしょうか?」
「携帯は持っているかしら?」
「持っていますが……」
「それじゃ、電話番号の交換をしましょうか?」
「自分とですか?」
「ええ。勉強していて分からないところがあった時は、遠慮なく電話してくれていいから」
「はあ」
俺は生返事しながら携帯を取り出し、安倍先生が教えてきた電話番号を入力し設定する。
「あ、桂木君」
「何でしょうか?」
「私のことは、珠江先生って呼んでくれればいいから」
「安倍先生ではなく?」
「ほら! 苗字で呼ばれると何だか壁があるような感じがしないかしら? 私、こう見ても21歳だから、何だか苗字で呼ばれるとこそばゆいのよね」
エルフ顔負けの美女がニコリと微笑みかけてくる。
間違いなく普通の16歳の男子高校生なら一発で恋に落ちているレベルな笑み。
まぁ、俺には効かないが。
「そ、そうですか……」
「ええ。駄目かしら?」
何と言うか、この女性教員。
胸が非常に大きい。
恐らくだが、F? いやGかHはある。
そんな爆乳女子教師が、上目遣いに頼み込んでくるのだ。
「まぁ、仕方ないですね。じ、自分も教師と生徒の間で、壁があるのは薄々あれな感じでそんな感じだと思っていたので」
俺は何度か咳をしながら答える。
まったく、俺じゃなかったら確実に、動揺していたまである。
「嬉しい! 良かったわ! 私の初めての生徒さんね! えっと……優斗君でいいかしら?」
「まぁ、俺が名前で呼ぶんですから、珠江先生も俺のことは好きに呼んでもらっていいですよ」
ここはギブアンドテイクで行くとしよう。
相手が譲歩するのなら、こちらも譲歩するのが、交渉の基本という奴だ。
それにしても、女性としての色気がスゴイな。
まな板のハイエルフなんて足元にも及ばない。
「あ、優斗君ってSNSやってる?」
「いえ。自分は、そこまでは――」
「それは、勿体ないわ。私が設定してあげるわね!」
別にお近づきになりたいとか疚しい気持ちは一切ない。
ただ、教師との連絡が付きやすい方がいいだろうという理由で、珠江先生とSNSのIDを交換する。
それにしても、最初に作ったSNSの一人目の登録が超絶美女な銀髪赤眼の女性とは……。
「はい。優斗君」
「どうも」
設定してもらった携帯電話を受け取り学生服の上着へ入れた。
「それじゃ優斗君、今度時間を空けておくからお互いに都合がついたら勉強を見てあげるわね」
「わかりました」
結構、親身になって勉強を教えてくれる先生なのか?
まぁ、教育実習生って見た事も話したことも今までなかったからな。
たぶん、教員になるために燃えているのかも知れないな。
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