第143話
学校の掃除が終わり、下校時間になり、都や純也と共に校舎を出る。
「それにしても学校が近くなってよかったな」
「私としては日向駅近くも悪くはないと思ったけど……」
「そうか? 帰りとか電車待たなくて良くなったし――」
純也と都が会話して歩いているのを後ろから眺めながら、しばらく歩くと、京成線の検見川浜駅に到着した。
千葉駅まで乗り継ぎで移動したあとは、中央改札口から出てバス停からバスに乗る。
「そういえば優斗」
「ん?」
「今日から優斗の家に帰ってもいい?」
「普通に、都は自宅では寝泊まりしないのか? と、言うか都の家には立派な寝室があるだろうに。俺の家に来る意味が分からないんだが……」
「でも、お金払ったよね?」
「……飽きるまで居てください……」
くそっ! 貧乏が憎い!
「それじゃ、今日からは優斗の家に行くね!」
「何だか都と優斗は、新婚さんみたいだな」
「純也……」
俺は半眼で純也に視線を向ける。
俺と都は、そういう仲ではない。
「まぁ、気にするなよ。とりあえず学校にバレるような真似だけはするなよ?」
「それは俺に言われても困る」
純也の軽口に返答しながら、俺はバスの手すりを掴んでいた。
しばらくして千葉城近くのバス停にバスが停車し、俺と都はバスから降りる。
純也の家は、まだ少し先なので、純也と別れたあとは、公団住宅へ二人で戻った。
「ねえ、おにいちゃん」
「どうした?」
俺は、夕食を作りながら台所からリビングの方へと視線を向ける。
「今日、学校の帰りに銀行口座チェックしてきたんだけどね。50万円くらい足りないの……。何かに使った?」
「あ……」
俺は、山崎に情報料として50万円渡していた事を思い出すが、それを妹に上手く説明する自信がないが――。
「何かに使ったの?」
「ちょっと教材とかにな……」
苦しい、あまりにも苦しい言い訳だ。
自分で言っていて、それで妹が納得なんてしないだろ! と、言う突っ込みを思わず心の中でしてしまうほど、無理のありすぎる説明。
「50万円も掛る教材って何?」
「そ、それは……」
「それは?」
「……おっと! ちょっと電話が――」
俺はガスを止めて、家から急いででる。
そして――、
「はい。住良木です」
「俺だ。桂木だ」
「桂木さん、どうかなさいましたか?」
「ちょっと頼みがある」
「頼みですか?」
「ああ。50万円ほど貸してほしい」
「……何に使われるのですか?」
「何も言わずに貸してほしい。代わりに何か何でもいいから仕事を引き受けよう」
「…………わかりました。それでは、すぐにそちらに向かいますね」
住良木に貸りを一つ作る事になってしまったが、致し方ない。
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