第141話

 始業式も無事に終わり、学校の朝のホームルームが終わったところで――。


「優斗」

「どうした?」


 前に座っていた純也が、俺の方へと椅子を座り直す。


「今日の、山城生徒会長だけどさ、何かイライラしてなかったか?」

「そうか?」


 以前に山城綾子の身体をチェックした時には、何の遺伝子疾患も無かったが?


「あとさ。あの女医さん! すごかったな! どう見ても大学生って見た目だよな! その割には、きちんと出るところは出て! 引っ込むところは引っ込んでいる超絶美人だったよな!」

「俺に話題を振るな。そして、お前は、自分の生命に対して社会的にも危機感を覚えた方がいい」


 クラスの女子たちから殺意の波動が向けられている事に純也は気が付いていないのか。

 まったく……、鈍感な奴だな。

 俺が知っている冒険者ギルドでも、女であっても実力者はいたからな。

 そんな言い方をしていたら首を撥ねられても仕方ないぞ?


「俺は、好みの女性が居たら迷わず口にするのがポリシーだからな!」

「そうか。とりあえず、俺は巻き込まないでくれ」

「またまた優斗も好きなくせに!」

「だから、女子が居る場所で、そういう発言は命取りになるぞ……と――」


 俺は、クラス中の女子から向けられている白い目に溜息をつく。


「そういえば、これからどうする? 始業式だけだったろ? 今日の予定って」

「そうだな……。――でも、掃除があるとかパンフレットに書いてなかったか?」

「掃除って……、言われてみればそうだよな……。新校舎ではないもんな」

「だな。急遽、統廃合で廃校になった校舎を流用して高校の校舎として利用する形だからな」

「業者を呼んで掃除してもらえばいいのにな」

 純也の意見には俺も同意するが、さすがに一校まるごとの掃除だと、業者の手配が間に合わない可能性があるからな。


「まぁ、これから俺達が使う校舎なんだから、掃除も良いんじゃないのか?」

「そこは教育委員会とか、山城家が何とかして欲しいよな。半分、私立みたいなもんなんだからさ」

「今更だな」


 しばらくして担任の金木が教室に入ってくる。

 その姿はジャージ姿。

 赤いジャージを着ていることから、掃除という可能性は非常に高い。


「それじゃ、これから全校を上げての掃除をします。女子は校舎内の掃除。男子は、校舎外の掃除を担当してください。掃除の割り当てについては立候補も考えましたが、時間がかかると予想しましたので先生の方で割当を考えておきました」


 黒板に書かれていく割り当ての場所。


「俺、トイレ掃除かよ……」


 純也の担当は、どうやら男子トイレのようだ。

 そして――、俺と言えば……。


「屋上って、掃除する場所があるのか?」

「優斗の掃除場所ってあたりじゃないか?」

「――いや、他のところの掃除場所は、3人は最低配置されているのに、俺とか一人なんだが?」

「どうせ、屋上とか掃除する場所ないだろ」

「まぁ、そうだな」


 屋上の何を掃除しないといけないのかまったく想像がつかん。


「はい! それじゃ移動して掃除開始! 屋上班は、道具は屋上に置いてあるから、それを使ってくれればいいから!」


 すぐに移動を開始、俺は屋上へと向かう。


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