最強の英雄は幼馴染を守りたい

第127話

　ゲームセンターに到着したところで、ガラスで作られた壁に背中を預けたまま、俺と目が合ったところで純也が近づいてくる。

「優斗、大丈夫だったか？」

「ああ、俺は大丈夫だが……。何発か殴られたみたいだな。痛く無いのか？」

　すでに日は沈み、ゲームセンターからの灯りと、街灯の灯りに純也の顔は照らされていたが、頬が膨らんでいる事から、顔を殴られたのは容易に想像がつく。

「すまないな。俺のせいで――」

　おそらく、純也一人なら、異世界に転移する前に、俺を虐めていたであろう男達に絡まれることは無かったはずだ。

　つまり、純也が怪我をしたのは俺のせいだ。

「気にするな。友達を守るのは当たり前だろ。それに、ずっとそうだったからな」

　ニカッと笑ってくる純也。

　恐らく、殴られた箇所は、1時間もすれば腫れてくるだろう。

　そして――、俺の力で治療することは可能だが……、そんなことをすれば純也に俺の力がバレてしまう恐れがある。

「なんだよ！　そんなに深刻そうな顔して！　俺は、何ともないって！」

「いや、お前――、殴られているじゃないか」

「まぁ、俺は別に問題ない。それよりも優斗は……、どこも怪我はないみたいだな。痛ててて――」

「あまり無理するな」

　俺は、そう呟く。

「優斗に、心配されるとはな！　それにしても、警察が来るのが早すぎだったけど、優斗が警察に連絡してくれたのか？　警察官の恰好はしていなかったけど、警察手帳は持っていたから刑事だと思うけど……」

「そうなのか？　俺も、刑事の人に助けてもらった」

「へー。偶然ってあるんだな」

　純也は何度か頷く。

　それを見て、そんなに刑事が暇している訳はないという突っ込みをしたくなったが、まぁ、そこは純也も納得しているのだから、掘り起こす必要はないと結論ずける。

「とりあえず、今日はどうする？」

「今日って、もうすぐ午後8時だぞ？　さっさと帰って純也は殴られた箇所を冷やしておかないと明日、とんでもないことになるぞ？」

「それはそうだな」

「ああ。とりあえず、家に帰る方向がいいかもな」

「まったく優斗は真面目だな」

　俺と純也は、千葉城付近まで移動したところで分かれる。

　純也も都も俺の家からは、そんなに距離がないからだが――。

「ただいま……」

　公団住宅の我が家に着くと、軽い足音が聞こえてくると共に、妹が玄関まで来る。

「おかえりなさい！　お兄ちゃん！」

「珍しいな。なんかいい事でもあったのか？」

「今日は、都さんが実家の用事で来られないって連絡あったの！」

「そうか……」

「今日はね！　胡桃お手製の夕飯を作っておいたの！　お兄ちゃんの好きな料理ばかりなの！」

「それじゃお風呂に入ってくるとするか」

「ええっ！？　せっかく料理作ったのに！」

「わかった、食べるから――」

　涙目で訴えかけてくる妹に、俺は折れて一緒に食事をしたあと風呂に入り、床についた。