第103話

「聞かせて貰いたいと言われてもな……。そもそもガードレールに付着していた血が、俺の血だという証拠もないだろう?」


 俺は肩を竦めながら、警察関係者と語る男を見上げる。

 身長は、俺よりも頭一つ分大きい。

 おそらく190センチ近くはあるだろう。

 そんな男は――、俺の一挙手一投足を確認するかのように疑いの視線を向けてきている。


「なるほど……」


 男は溜息をつくと俺に名刺を差し出してくる。

 その名刺には、千葉県警察本部所属 警視 館浦(たてうら) 一茶(いっさ)と書かれている。


「館浦一茶?」

「館浦と呼んでくれて構わない」

「そうか」

「――で、話は少し戻るがガードレールに付着していた血痕が君の血液ではないという、先ほどの君の話だが、それについては、すでに君の血液と照合がついている。

「どういうことだ?」


 俺は血を提供した覚えなんか無いが……。


「桂木君。日本の学生は毎年、血液検査をしている事を忘れているのかな?」


 その館浦の言葉に、俺は心の中で「――あっ」と、思わず声を上げてしまう。

 つまり、最初から――。


「すまなかったね。君の証言が欲しかったから遠回しに聞いてしまったが、君は何かしらの力を持っている。それは、こちらの方でも既に確認が取れている」

「――何を、言っている?」

「ボーリング場の破壊の件についてだよ? 心当たりがあるだろう?」

「……」

「黙秘も良いが――、すでに状況証拠は揃っている。沈黙していても無駄だと思うがね」


 館浦は、懐から数枚の写真を取り出す。


「これを見てくれ」


 差し出された社員は、俺が都と一緒にボーリング場で遊んでいた時のモノ。


「さて――、君の力については、既にこちらの方で映像を確認している。その映像を写真として出力したのが、いま渡した写真になる」


 館浦は更に言葉を続ける。


「まさか、あれほどの問題を起すとは思わなかった。だが――、不思議に思わなかったのかな? ボーリング場で、ピンを破壊するほどの玉を投げて機械を壊しておいたのに、何の弁償も発生しなかったことに」

「……」

「沈黙は肯定と受け取るとしよう。――さて、以上の点から君を私達、千葉県警察本部は人間としては見ていなかった」

「なるほどな……」


 つまり、俺にコンタクトを取ってきた時点で、こちらが言い逃れできない証拠を用意してきたってことか……。


「おっと! 別に、君をどうこうするつもりはない。 ただ、神社庁の情報が欲しい。神社庁は一体、何をしているのか? という情報がね。そして君は、神社庁の人間から勧誘を受けているという話を聞いた」

「耳が早いな」

「それが警察の仕事だからね。――で、どうかな? 警察に協力してはくれないかな?」

「断ったらどうするつもりだ?」

「そうだね。まずは、君の異常な力について、神楽坂都君に話を伺えればと思っているが……」



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